米国防総省、女性兵士の中絶手術の「旅費」を負担すると発表

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米国のロイド・オースティン国防長官は10月20日、中絶手術を受けるために州外に出かける女性兵士の旅費は国防総省が負担することになると発表した。

国防総省は、中絶手術が禁止されている州に配属された軍人とその扶養家族が、州外で中絶手術を受ける場合、旅費と交通費を負担する。

同省はまた、中絶をめぐるプライバシー保護の施策を強化し、省が運営する医療機関に対し、業務に支障がない限り職員の生殖医療情報を司令官に開示しないよう指示し、軍人が上官に妊娠を報告する期限を妊娠後20週間までに伸ばすと発表した。

国防総省は、中絶手術を受けるための旅費や交通費を負担するが、手術そのものの費用は負担しない。これは、合衆国憲法の修正条項(Hype Amendment)に、レイプや近親相姦、医療上の緊急事態の場合を除き、中絶のために税金が使われてはならないという規定があるためという。

国防総省は、6月に最高裁がロー対ウェイド判決を覆した後に、省の医療施設はレイプや近親相姦、医療上の緊急事態の場合には中絶手術を行うが、それ以外の状況で中絶する軍人は州外に行かなければならないというガイドラインを出していた。米国のシンクタンクのランド研究所(RAND)によると、州外での中絶手術のための旅費は、平均1100ドル程度と推測できるという。

9月に発表されたランド研究所の分析によると、中絶を禁止または厳しく制限している州に住む現役の女性軍人の割合は40%に達しており、これは米国内の現役軍人の18%にあたるという。ランド研究所は、約45万人の現役軍人が中絶を禁止している州に住んでおり、そのうち8万人が女性であると試算している。

最高裁がロー対ウェイド判決を覆し、その後各州が中絶を禁止したことで、軍への潜在的な影響が懸念されるようになった。国防総省の当局者は、中絶の禁止が軍の採用に影響を与えるかもしれないと議会で証言した。

民主党議員は、妊娠中の軍人が中絶治療を受ける際の負担を軽減するための法案を議会に提出しており、空軍と陸軍は、軍人が事前承認を得ずに中絶手術のために休暇を取ることを認める措置を導入した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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