ジブリを生んだ「メディア・エンタメの怪人」 超豪快な表の顔とウラの顔

Romolo Tavani / Shutterstock.com

コスナーは1987年に『アンタッチャブルズ』に主演するまではハリウッドスターとは認識されず、多くの映画に端役で出演しながらロックバンド活動も行っていた。80年代初期にロサンゼルスで、音楽子会社の社長から偶然コスナーを紹介された徳間は、その場で次作映画への出演をオファーし、コスナーの囲い込みを試みた。
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成就しなかったものの、コスナーは徳間の放つオーラに感銘を受け、その後も個人的な付き合いが継続。ロサンゼルスで開催された徳間事業団の北米進出記念パーティーにも、既にスターの座を得ていたコスナーがバンドを引き連れて登場し、参加者を驚かせた。

宮崎駿や高畑勲に直感で長編アニメ映画制作を委ねた慧眼が、コスナーを成功前に見出していたことには驚愕させられるが、自らの勘に事業を託す姿勢は一貫していた。
『アンタッチャブルズ』のNYプレミア|写真左より)アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・マーティン・スミス、ケビン・コスナー、ショーン・コネリー(Photo by Ron Galella/Ron Galella Collection via Getty Images)

『アンタッチャブルズ』のNYプレミア|写真左より)アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・マーティン・スミス、ケビン・コスナー、ショーン・コネリー(Photo by Ron Galella/Ron Galella Collection via Getty Images)

『敦煌』『おろしや国酔夢譚』ではハリウッド大作規模の製作費を調達

中国との文化交流に熱心だった徳間は、井上靖原作の日中合作映画『敦煌』を製作し、88年に公開した。人民解放軍兵士を千人以上動員した戦闘シーンのロケや、現地に5億円の宮殿セットを建設したことなどで、製作費は45億円まで膨張し、当時のハリウッド作品に匹敵する予算規模の超大作となった。

現在、ほぼ全てと言っていいほどの映画作品で導入されている「製作委員会方式」の原点は、この『敦煌』で徳間によって築かれた。中国事業に注力していた丸紅からの5億円をはじめ、一般企業からの出資を自ら集めて、作品を完成させたのだ。
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共同事業体に名を連ねた電通には、宣伝広告だけでなく、450万枚を上回る企業向けチケットの販売も委ねられた。成田豊社長命で社員も2枚ずつ購入し、鑑賞したという。

こうして辛うじて赤字は免れたものの、当初から期待していた欧米諸国での配給は殆ど叶わなかった。
『敦煌』DVD(作品製作:1988年/監督:佐藤純彌/出演:西田敏行、佐藤浩市ほか、KADOKAWA 角川書店)

『敦煌』DVD(作品製作:1988年/監督:佐藤純彌/出演:西田敏行、佐藤浩市ほか、KADOKAWA 角川書店)


そこで、次に徳間が国際配給を視野に企画したのは、同じく井上靖原作の『おろしや国酔夢譚』(92年)だった。

伊勢から江戸に向かう途中、嵐に遭遇してアリューシャン列島に漂着した大黒屋光太夫が、苦節の上、ペテルスブルグ(サンクトペテルブルク)でロシア女帝エカチェリーナ二世に拝謁を果たし、帰国を認められるという歴史映画だ。
『おろしや国酔夢譚』DVD(作品製作:1992年/監督:佐藤純彌/出演:緒形拳ほか、KADOKAWA 角川書店)

『おろしや国酔夢譚』DVD(作品製作:1992年/監督:佐藤純彌/出演:緒形拳ほか、KADOKAWA 角川書店)


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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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