それでも、やはり一定の実践には影響力があった。「重要な要素の1つは測定を始めたことだと思う」とビーサートは指摘する。リーダーたちはジェンダーバランスを「達成すべき絶対的最優先目標の1つ」だと認識すると、業績評価指標と結びつけた。
もう1つの要素は、リーダーシップチームに形だけ女性を配置するのではなく、女性リーダーの多様性を周囲に示すことが可能なクリティカル・マスを達成することだった。3人以上いると、女性たちがまったく同じ存在ではないと認識され、より大きな影響を持つという。イケアは社内規定で、トップリーダー職では各職種の最終候補者が必ず男性1人、女性1人となるよう定めている。
給与も要素の1つだ。イケアは2021年に事業全体で、給与履歴の照会を禁止し、女性の交渉能力ではなく仕事の価値に基づいた給与を支払うことで、過去の給与格差の固定化を回避することに成功した。経験や業務範囲の違いでは説明できない賃金格差の是正にも取り組んでおり、同様の職種における「説明できない」男女間の給与格差は、2020年度の8.04%から2022年度には4.84%に縮小したという。
最後に、男女ともに手厚い育児休暇で知られるスウェーデン企業のイケアが、他の企業より早くジェンダー平等に到達したことは驚くに値しないかもしれない。同社は多くの国で法定より充実した育休を提供しており、子どもが生まれた後での仕事復帰をより多くの男性・女性に促す効果が期待できる。
たとえばインドでは、民間企業で働く男性には育児休暇が義務づけられていないが、イケアは男女とも26週間分の給与全額と福利厚生を提供している。また、有給育児休暇を連邦政府が義務づけていない米国では、一時的労働不能休暇に加え、母親と父親に最長16週間の休暇を認めている。
ビーサートは、会社がスウェーデン発祥であることの影響を認めている。だが、それがすべてではないと語る。「私たちはスウェーデン人として育ってきたが、原点はイケアの文化にあると思う」
「『多くの人のために、多くの人によって』を体現すること。多くの人には、男性も女性も含まれる」
(forbes.com 原文)