そんな学生たちには「キャリアは自分自身で作っていくもの。働きながら変化していっても良い」という話をすると、「新鮮だけど、勇気づけられた」と返ってくる。
STEMの知識は、キャリアの幅を広げる
エンジニア職の魅力とは──? まったく異なるキャリアを歩んできた2人に聞いてみると、同様な答えが返ってきた。「仕事そのものが知的好奇心を満たすもの。基礎を学ぶことで長く続けられる仕事で、日本に限らず幅を広げることができます」(奥田)
「世の中を変えていく局面で、技術は役に立ちます。例えば、企業がAIをどう活用すればいいか知見を持つことも強みになります。ベースとなる知見やスキルを身につけると、応用でき、職業選択の幅も広がっていきます」(宇都宮)
STEM分野でのキャリアに少しでも関心がある人たちに向けて、奥田は「長寿社会になるなかで、自分の関心もキャリアも何度か変わっていくのが当たり前になっていく」ことを前提にこう話す。「STEM教育には、論理的な思考で相手に伝えていく汎用的な強みがあります。技術的な知識は後からでも学べるので、自分でハードルを高くせずに一つだけでも学んでみることで一歩を踏み出せると思います」
STEM分野で活躍していくために、すベての人がエンジニアを目指さなくてもいい。「文系」と言われるマーケティングや営業職であっても、STEMの知識を持つことが強みになる仕事も多くある。
「STEMが特殊なものではなく、楽しさを感じられるように伝えていきたい。また、ロールモデルはひとりひとり違うので、文系・理系という枠に縛られず、学生に向けてキャリアパスの多様性を想起できる機会を増やしていきたいですね」と、宇都宮は展望を語る。
文理選択によって学生時代により深く学ぶ学問は変わる。その一方で、長いキャリアのなかでリスキリングによって、柔軟に変化していける時代だ。女性だからといって躊躇するのはもったいない。自分の興味関心を大切に行動することで、新しい道が拓けていく。
宇都宮聖子◎アマゾン ウェブ サービス ジャパン 技術統括本部 プリンシパル 機械学習・量子ソリューションアーキテクト。AWSにてプリンシパルスペシャリストソリューションアーキテクトに従事、AIと量子コンピュータ分野の技術担当。2008年、大学院にて光半導体物性の量子シミュレーション研究で博士号(情報理工学)を取得。2008〜2017年 国立情報学研究所にて助教~准教授として、量子情報・量子コンピュータ研究に従事。その後自動車会社のエンジニアを経て2018年よりAWSでキャリアをスタート。
奥田 裕子◎アマゾン ジャパン 人事部 キャンパス採用チーム 日本・オーストラリア・ニュージーランド担当 シニアマネージャー。文教育学部卒後、新卒でエンジニア職としてキャリアをスタート。その後人事に興味を持ち、コンサルティングファームを経て外資系企業の人事を担当後、2015年アマゾンに人事担当として入社。2021年に社内異動で現ポジションに就任。MBA保有、ボランティア団体の元理事。
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