WOMEN

2023.03.09

AmazonのSTEM女性が導く「文系・理系」その先にある世界

アマゾン ジャパン 人事部シニアマネージャー 奥田裕子(左)と AWS 機械学習・量子ソリューションアーキテクト 宇都宮聖子

理系畑でもキャリアチェンジできる

「Amazon WoW」の取り組みを始めて半年たった頃、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)の機械学習・量子ソリューションアーキテクト、宇都宮聖子はキャリアのイベントに登壇した。彼女もまた、研究者から開発職・エンジニアへと何度かキャリアチェンジをしている。
 
個人的にも出身高校を中心に10年以上、出張授業を続けており、AIや量子コンピュータの研究とキャリアの話をしてきた。宇都宮も、学生から「家族や親族に女性の研究職やエンジニアがいないので、将来のイメージが湧かない」や「研究に興味があるけど、博士号取得後のキャリアが不安」といった声を直に聞いてきた。
 
AWSでは、AIと量子コンピュータ分野の技術担当を担う宇都宮。「ソリューションアーキテクトとは聞き馴染みがないと思いますが、クラウドを活用するお客様に向けて特にAIや量子領域の技術支援をしています」と語る。
 
例えば、顧客の自社データを活用し、AIによって売上予測をしたり、顧客へのレコメンデーションを提案したり。インターネットのサービスを科学的な視点でより良いものにしていくため、インサイトを与える仕事だ。


宇都宮は子どもの頃からコンピュータサイエンスに興味があり、理系畑を歩んできた。中学時代からプログラミングに慣れ親しみ、人工知能に関心があった。工学部では電気電子を学び、大学院では量子コンピュータ研究に没頭し、情報理工学で博士号をとったのち、研究職に就いた。修士から14年間の研究生活後に、自動車会社を経て2018年にAWSに入社した。
 
学生時代やSTEMキャリアのなかで性差別を感じたことはないが、様々な部署の人たちと仕事をするAWSに転職前までは、常に女性が少ない環境に身を置いてきたことで「無意識に我慢していたところはあったかもしれない」と振り返る。

大学院時代は200人中女性は10人程度、物理研究となると2,3%だけ。「STEM分野にも多様なバックグラウンドを持つ人がいれば、困った時に励まし合うことができ、さまざまなキャリアパスを描けて心強いと思う」と感じている。

文教育学部卒・エンジニアから人事へ 文理横断キャリア

一方、奥田は文教育学部を卒業後、新卒でエンジニアの世界に飛び込んだ。全く違う道のようだが、本人はそう感じていない。高校時代から数学や物理が好きだった。統計を用いた卒業研究を執筆するなどして、理系分野も「それほど遠いとは感じていなかった」。
 
大学生活を送った2000年代は、インターネット黎明期から急速に普及した頃。奥田は「世の中にある距離の差によってできる情報格差をIT技術によって変えたい」と感じ、周囲には大学院に進学する友人も多かったが、迷わずITエンジニアの道を選んだ。同期の中にはコンピューターサイエンスを専門的に学んだ人もいたが、そうでない人もおり、不安はなかったと振り返る。
 
その後、キャリアの興味が変わり、人事に関心を持ち、のちにMBAも取得。コンサルティングファームや外資系企業の人事を経て、それまでの経験を生かし、2015年にアマゾンに転職した。

「理系・文系という区分けは便宜的なものだと考えています。本人の興味次第で行ったり来たりしながら、再チャレンジできます。文系でもエンジニアに興味があれば、そのキャリアに進むことも可能だと思います」
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文=督あかり

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