通信大手ジャパネットたかた創業者の長女として知られるが、ソニーに勤務した経験があり、J2クラブのV・ファーレン長崎では社長を務めた。その経営手腕もさることながら、「日本の女性活躍社会の牽引する」ことを設立の意義に掲げるWEリーグの顔としても期待される存在だ。
「女性目線って、何なんでしょうか?」
日本初の女子プロサッカーリーグ・WEリーグの2代目チェア(理事長)に就任した髙田春奈は、自問するかのように言った。
「あの髙田明の長女」「Jリーグ唯一の女性社長」。髙田にはそんな枕詞が常についてきた。J2長崎の社長時代、女性経営者の知り合いは皆無。地元政財界で年上男性に囲まれるなか、髙田は「女性」と見られることを、意識的に感じないようにしてきた。
通販会社ジャパネットたかたの創業者の娘と言われることにも、あえて“鈍感”になった。「経営者として個人の差こそあれ、性差を感じることはまったくありませんでした」(髙田)。
世間の不当な評価や偏見に対して、あえて鈍感でいることで、プレッシャーを無効化する。この鈍感力が、日本の女子サッカー界にも必要ではないかと感じている。
「自分たちは男子サッカーに劣っている、あるいは男子サッカーを“目指す”という発想が、女子選手たちには少なからずある。でもそれは事実ではなく、自身の見方が形成しているものです」
実際、日本代表のFIFAランキングは女子11位、男子24位。事実に基づくならば、女子が劣っているという見方は正当ではない。とはいえ、WEリーグは昨季の入場者数が1試合平均1560人と、集客面での課題は大きい。
「でも、このなかには世界トップレベルの選手が当たり前にいる。WEリーグはもっと価値を高められるし、もっと稼げるはずです」
現在も東京大学大学院博士課程に籍を置き、ハンナ・アレントを研究対象として教育思想を学ぶ。また、ライフワークとして平和活動にも取り組む。命の重みにおいては、女性であることや日本人であることは何の関係もない。そうした属性を意識しなくてもよくなる社会の実現を、WEリーグから目指す。
「女子サッカーが正当な評価を受けることが、女性活躍社会の実現にもつながる。その先に平和な社会が訪れることを信じています」
たかた・はるな◎1977年、長崎県生まれ。国際基督教大学卒業後、ソニー入社。2005年、独立。主にジャパネットグループにおける人事コンサルティング、広告代理店業を経て、2018年JクラブのV・ファーレン長崎の上席執行役員、20年に代表取締役社長就任。22年Jリーグ常勤理事、JFA理事に就任。同年9月より現職。JFA副会長。