ウクライナの衛星通信やインターネット網は、ロシアによる破壊工作で使えなくなったにもかかわらず、米国のネットワークにつながることで、危機を脱したからだ。
日米韓は昨年11月の共同声明で「北朝鮮のミサイル警戒データをリアルタイムで共有する」としたが、今後は警報システムの共有から撃墜システムの共有へと進化していく可能性が高い。米国にしてみれば、「日本と韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化しないと、統合抑止が進まないだろう」という不満がある。
米国のこうした考えが、すべて日本の国益に合うわけではない。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2月2日の講演で、中国の習近平国家主席が「2027年までに台湾侵攻を成功させる準備を整えるよう、中国軍に指示を出した」との見方を示した。
インド太平洋地域での米軍の最近の動きは、まさに「中国・台湾有事シフト」というものだ。安全保障の問題だから、最悪のケースに備えるのは当然として、日本の中国専門家の間では「台湾が独立を宣言しない限り、中国が近く、台湾に侵攻する可能性はほとんどないだろう」という声が強い。
米国の安全保障分野のアプローチをみていると、「最悪の事態(台湾有事)」に備える目的は当然ある一方、「中国との覇権争いに負けたくない」という思惑ものぞく。米国は毎年、宗教や人権に関する報告書を発表し、自分たちの価値観に合わない国を断罪してきた。
大体が日本人の価値観と近いため、それで問題はないようにも見えるが、普通の国が同じ事をすれば、「何様のつもりだ」という非難を受けるだろう。米国はこんな居心地のよいポジションを放り出したくないだろう。
米国に、自らの覇権競争の先兵として日本や韓国を取り込みたいという思惑がまったくないとは言えない。台湾有事に備え、防衛力を強化し、反撃能力を保有することには賛成だが、何でもかんでも米国の戦略に乗っかれば良いというものでもあるまい。
日本も韓国も独立国家だから、論理的には断ることはできる。でも、私たちはミドルパワーの国民だ。日本の外交官たちが自虐気味に「ジャイアン」と呼ぶ米国の誘いを断れるわけがない。
「私たちが一緒に立つとき、私たちの国はより強くなり、世界はより安全で繁栄します」。バイデン氏が5日付で発表した声明の、この結びの言葉の意味について、いま一度考えた方が良さそうだ。
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