経済・社会

2023.03.07 16:30

徴用工問題の解決、米国は日韓に何をやらせようとしているのか

Photo by Demetrius Freeman/The Washington Post via Getty Images

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「日韓による本日の(徴用工問題を巡る)発表は、米国の最も近い同盟国である両国による協力とパートナーシップの新たな章の始まりだ」。米ホワイトハウスが現地時間の5日付で発表した、バイデン大統領の声明だ。「待ちに待った」という感情があふれ出すような、大統領のコメントだと言って良いだろう。

徴用工問題などにより、当時の韓国の文在寅政権と日本政府との関係が冷却化するなか、米国はこれまで散々苦労して、両国の関係を修復しようとしてきた。外務省局長級や次官級、外相、首脳レベルに至るまで、「イヤイヤ」をする日韓両政府の手を引っ張り、日米韓3者協議を何度も繰り返した。

努力していたのは、米国務省だけではない。在韓米軍や在日米軍は、朝鮮国連軍の基地も兼ねる在日米軍基地に韓国の軍や国会議員らを招き、日米韓安保協力の重要性を説いていた。

昨年6月、訪日したラカメラ在韓米軍司令官は関係者に対し、日米安保条約の事前協議制度があるため、在日米軍を韓国に派遣するためには日本の理解が欠かせないことを強調した。同時に、韓国が拒めば、日本は在外邦人を救出する自衛隊を韓国に送れない点も指摘した。ラカメラ氏は「日韓が対話して、お互いにもっと多くのことを知るべきだ」と語ったという。

こんなに汗をかく米国に対し、日本のなかでは「こんなに日本と韓国のことを考えてくれて、ありがとう」という人から「日韓安保協力なんて要らない。余計なおせっかいだ」と怒る人まで、様々な意見があるようだ。

でも、間違えてはいけないのは、米国は自分の国益のために動いているという事実だ。米政府には、ジャパニーズ・アメリカンもコリアン・アメリカンもいるが、彼らは祖国である米国のために忠誠を尽くしているに過ぎない。
 
米国が現時点で「日韓関係の改善」が必要不可欠とする政策課題は大きくみて、2つある。一つはサプライチェーン(供給網)の再編、もう一つが安全保障分野での「統合抑止」(integrated deterrence)、だ。

バイデン政権は、米国やロシアなど権威主義陣営に頼らないサプライチェーンの構築に邁進してきた。その象徴が半導体だ。バイデン政権は昨秋、中国向けの半導体輸出規制の強化策を発表。今年2月24日には、ロシアの防衛産業を支援したとして、中国企業を含む約90の企業を半導体などの輸出規制の対象に指定した。

そんな米国が不満を抱いてきたのが、日本の韓国向け半導体素材の輸出管理措置だった。日本が19年夏、この措置に乗り出した当時、米国政府関係者は「サプライチェーン再編で忙しいのに、日本と韓国は内輪で何をもめているんだ」と怒っていた。
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文=牧野愛博

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