経済

2023.03.01 18:00

ウクライナ侵攻から1年。日本人カメラマンが撮影した失われし風景の写真展

いま写真展を企画した想い

こうした話は糸沢さんから語られる多くのエピソードのひとつにすぎないが、自分の子どもたちの世代に関わる問題として、現代の戦争というものの実態やそれをどう受けとめるべきかについて、一から考え直さなければならないと筆者は思うようになった。

だからといって、何ができるというわけでもないのだが、昨秋彼が帰国する前に話をしていたウクライナチャリティ写真展をこのたび開催することになり、事務局を務めることになった。
刈り取った後の畑でひまわりの花を持つ少女。当時4歳。彼女が紛争でこの地を退避したのは8年後で小学校6年生だった(2006年7月撮影)

刈り取った後の畑でひまわりの花を持つ少女。当時4歳。彼女が紛争でこの地を退避したのは8年後で小学校6年生だった(2006年7月撮影)

ひまわりを持つ女性。紛争がなければ、この「ひまわり畑」シリーズを継続する予定だった(2009年7月撮影)

ひまわりを持つ女性。紛争がなければ、この「ひまわり畑」シリーズを継続する予定だった(2009年7月撮影)


糸沢たかしさんの写真展のタイトルは「ひまわり畑の向こう側~日本人が暮らしたウクライナ・市民の眼で見た紛争と戦争」というものだ。

彼は今回の写真展を企画した自らの想いについてこう話す。

「2022年2月24日に戦争が始まってから、すでに1年が過ぎました。同時に2014年に私たち一家がルガンスクから退避してから8年が過ぎ、そこにまた1年が加わったのです。

戦争が始まって以来、文化や歴史、自然、民族など、多くの人たちがウクライナを知ろうとし、戦争の理由を探ろうとしてきました。

しかし、残念ながらいま見ることができるのは、多くが戦争の悲惨な状況であり、それ以前のウクライナや人々の暮らしについてはあまり語られることはありません。

ウクライナは平和な国であり、人々は美しいひまわり畑に囲まれて普通に暮らしていたのです。 私は、紛争前に撮ったウクライナの写真を通して現在の悲惨さを考えていただきたいと思い、この国の象徴であるひまわりの花の風景と、当時私が教えていた現地の学校の子供たちや友人たちの写真を展示することにしました」

糸沢さんは、会期中トークイベントの開催も予定していて、自らの体験した現地の生活や紛争前後の話をしてくれることになっている。

写真展では、ポーランドに退避したウクライナ人家族や糸沢さんが大学で教えた写真学科の学生、子どもたちの集合写真なども展示される。彼らの多くは現在、ルガンスクを離れ、散り散りになっており、消息がわからない人たちも多いという。

ルガンスク郊外のひまわり畑。低い丘が続く郊外のステップ地帯は、無数の迫撃砲の着弾痕を見ることができる(2009年夏撮影)

ルガンスク郊外のひまわり畑。低い丘が続く郊外のステップ地帯は、無数の迫撃砲の着弾痕を見ることができる(2009年夏撮影)




糸沢たかし ウクライナチャリティ写真展
「ひまわり畑の向こう側~日本人が暮らしたウクライナ・市民の眼で見た紛争と戦争」  
2023年3月4日(土)~12日(日)
13:00~19:00 会期中無休
Gallery Niepce 東京都新宿区四谷4-10-1メイプル花上2F

糸沢たかしトークイベント
「現地に暮らした日本人が生活を通して体験した紛争と戦争」
2023年3月11日(土)
13:00開場 トーク13:30~15:30
TIME SHARING四谷9A
東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル9F
会費 1000円(会場払い) 定員50名
事前申し込み要:https://peatix.com/event/3486663

文=中村正人 写真=糸沢たかし

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事