ブロックチェーン投資を急減させたソフトバンクの苦境

ソフトバンクグループCEO孫正義(Getty Images)

ソフトバンクグループは2023年の上半期を通じ「暗号資産やブロックチェーン関連の事業に投資する可能性は低い」と、同社のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の動向に詳しい情報筋がフォーブスに語った。

この動きは2022年から始まった模様で、別の匿名の関係者も、あるパートナーが「今年の残りは我々は完全に傍観者だ、たぶん来年の第1四半期か第2四半期も」というのを聞いたと話している。

一方、孫正義が率いるコングロマリットに詳しい別の匿名の情報筋は「ソフトバンクは長期のプロジェクトに専念しており、SVFは現在も新たな投資案件を吟味し続けている」と述べた。

ソフトバンクが2月7日に発表した2022年10-12月期(第3四半期)の59億ドル(約7900億円)もの損失と、新規投資案件の90%もの減少は、暗号市場の下落と相まって、デジタル資産分野の高いリターンへの期待を粉砕した。

Macquarie Capital(マッコーリーキャピタル)の2月15日の分析によると、SVFのポートフォリオ企業の94%が今後1年間の運営資金を確保できており、それが同社のスタートアップ投資の減速の一因だという。

しかし、ソフトバンクは6月にビジョン・ファンド2が、ブロックチェーンのインフラ企業InfStonesの6600万ドル(約89億円)のラウンドを共同主導して以来、暗号資産関連のプロジェクトに直接的な投資を行っていない。同社のクリプトおよびブロックチェーンのポートフォリオ企業の大半が属するビジョン・ファンド2は、2月のレポートによると、2019年6月の設立以来、499億ドル(約6兆7390億円)の投資に対して167億ドル(約2兆2550億円)の損失を計上している。同社はまた、昨年4月の会計年度の開始以来、SVF全体で345億ドル(約4兆6590億円)の損失を計上している。

シンガポールのニュー・ストリート・リサーチのアナリストは「ソフトバンクの新規投資は当分、存在しないに等しい状態が続くと予想する。彼らはきわめてディフェンシブであり続けるだろう」と述べている。これまでソフトバンクから資金を調達していた企業の中には、別の資金源に目を向け始めた企業も存在する。
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編集=上田裕資

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