寄付を受け取るのは、首都キエフにあるオフマディト小児病院。およそ1カ月にわたってロシア軍からの攻撃が続くなかでも、小児病院としては国内最大規模となるこの病院は、治療を継続している。
同作品の取引を仲介した美術品売買プラットフォーム、ロンドンに拠点を置くマイアートブローカーは、売り手側から売却益を直接病院に送るよう依頼されており、仲介手数料も合わせて寄付を行うという。
また、同社のマネージングディレクター、シャーロット・スチュワートによると、「CND Soldiers」と同様のプリント作品の市場価格は、2万~3万ドルだという。スチュワートは、バンクシー自身は今回の競売に関わっていないものの、過去に行ってきた慈善活動からみて、この取引と寄付を「支持していると考えたい」と述べている。
「反戦」支持した作品
「CND Soldiers」と名付けられたこの作品は、2人の兵士が赤いペンキでピースサインを落書きしている様子を描いたもの。バンクシーが2003年、2001年からロンドンの国会議事堂周辺で座り込みの反戦活動を行っていたブライアン・ホウに贈ったプラカードに描かれたものだ。
およそ10年にわたって抗議活動をつづけたホウは、英国のイラク戦争への関与に反対していた。プラカードは2006年、ホウが警察に身柄を拘束されたときに一時、当局に押収されていたという。
バンクシーは2005年、ロンドンのプリントショップ、ピクチャーズ・オン・ウォールズ(すでに解散)とのコラボレーションの一環として、この作品を700枚プリント。そのうち半数にサインを入れている。
マイアートブローカーによると、サイン入りの1枚には2020年12月に行われた競売で、この作品としては過去最高値となる12万2452ドルがつけられた。また、サインなしの1点は2020年10月に東京で、最高値となる7万5557ドルで売却されたという。
バンクシーの作品のうち、最も高値がつけられたのは「Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)」。2018年に行われた競売で、130万ドルで落札された直後、フレームの下部に取り付けられていたシュレッダーで細断されたことで知られている。この作品には2021年、その約18倍となる2450万ドルの値段が付けられた。
また、同じ2021年には、バンクシーが(コロナ禍で奮闘する)英国民保健サービス(NHS)に贈った絵画が競売に出され、その時点での過去最高となる2000万ドルで落札された。この売却益はすべて、NHSの慈善団体に寄付されている。