北京、ロンドン両五輪に出場した元プレーヤー池田信太郎さんは、村井の会長就任への動きが報じられた1月中旬に更新した自身のツイッター(@Dec27shintaro)でこう呟いていた。
───なるべく早く村井さんに改革を進めてもらうためにも旧勢力の一掃は急務だと思っています。可能な限り綺麗な協会にして渡してあげたいと思うのは僕だけですかね。───
池田さんが言及した「旧勢力」が誰なのかは一目瞭然だ。ツイートにはロンドン五輪女子ダブルス銀メダリストの藤井瑞希さん、かつて「オグシオ」として人気を呼んだ潮田玲子さん、小椋久美子さんらが賛同したが、理事や監事の顔ぶれは変わらなかった。
今後は解任動議を出された理事や監事だけでなく、否決票を投じた評議員も改革を進めていく上での反対勢力となるかもしれない。こうした状況に、村井はまずこう言及した。
「解任に賛成された評議員の方がいらっしゃることは厳粛に受け止めなければいけない問題だと思います。一方で当事者のみなさんには、それなりに納得させられる弁明があるのかないのか、このあたりも聞かなければいけないことかもしれません。そういうことも含めて、今後は天日干しをしていく覚悟です」
解任動議が否決された理事と監事に対する基本的なスタンスとして、村井は「罪を憎んで人を憎まず」を掲げている。これが三つ目の、最後の信念となる。
「日本のバドミントン界のために井戸を掘った方々だったはずですし、その過去の功績や努力に関してはもちろんリスペクトします。これは推測ですけれども、自分たちにとって都合のよいことのために、私利私欲のためにやっていいのかどうかはわかりません。よかれと思ったことが、もしかしたら時代の感覚からずれていた部分もあるかもしれない。基本的には『罪を憎んで人を憎まず』となるかもしれませんが、一方でボードメンバーとして経営判断を誤るとか、誤った方向に導いたことは絶対に曖昧にしてはいけないし、ここに関してはしっかりと識別する必要がある。リスペクトの心を持って対峙していきながら、是正を求めるところははっきりと申し上げるつもりです」
63歳にして火中の栗を拾う決断を下すまでにサッカー界とも、家族とも相談しなかった。チェアマン退任後に新会社を設立したのも、スポーツ界へ恩返しがしたい、という思いからだった。ならばバドミントンを介して、どのような形で恩を返していくのか。
「全力を尽くせば日本バドミントン協会が変わり、日本のスポーツ界そのものも大きく変わり、結果としてとても大切なものを手に入れられるかもしれないと考えています」
日本バドミントン協会の体質に対しては、所属クラブの指導者を介して現役選手からも不満や批判が上がっているという。裸一貫で乗り込み、改革に着手した村井は「ドアはいつでも開けておきます」と、声を直接届けてほしいというメッセージも発信している。(文中一部敬称略)