「バトミントンは世界的にも極めて高い競技レベルを持ちながら、日本の選手たちは非常に苦しい思いを強いられていたのではないか。スポーツは国民みんなのものですし、開かれたものでもあるし、国民に活力を与えられる本当に重要な資産でもある。それが数多くの課題で信用が失墜してしまい、その原因がマネジメントの不作為だとすれば残念でならない。
門外漢である分野でどこまでできるか、という点で多少のしゅん巡がありましたが、私の中には、日本スポーツ界に対して必ず恩返しがしたい、という思いが常にありました。バドミントン協会が直面している窮状から逃げてはいけないと感じる自分がいた。こうした思いのもとで困難な方を、私自身が、より緊張する方を選んだ次第です」
23年1月22日に開催された日本バドミントン協会の臨時評議員会で新理事に選任され、続けて開催された臨時理事会で代表理事および副会長への就任が全会一致で承認された。6月の役員改選で会長に就く予定の村井は、次のような第一声を残している。
「会長になってから何かをするのではなくて、私はもう理事メンバーの一人ですので、今日からフルスロットルでしっかりと対応していくつもりです」
村井3ケ条とは
もちろん、未知の世界へ徒手空拳で飛び込むつもりもない。チェアマンを務めた8年間で貫いてきた3カ条の信念を、バドミントン界にも持ちこむ決意と覚悟はできている。真っ先に実践するのが「魚と組織は天日にさらすと日持ちがよくなる」だ。「Jリーグ時代の私は『魚と組織は天日にさらすと日持ちがよくなる』と、口が酸っぱくなるほど言ってきました。ハラスメント行為や経済的な不正を含めて、数多くの不祥事は人の見ていない風通しの悪い密室で起こると私は思っています。なので、今後は徹底して透明性を高めていく。日本バドミントン協会の都合の悪い部分も含めて、すべてを開示していく。これが私に課せられた使命だと思っています」
Jリーグ時代は豪華絢爛なチェアマン室を含めた役員の個室を撤廃し、さらに職員のデスクも専用からフリーとする大部屋制を導入した。役員や職員のコミュニケーションのメインをメールから声がけに、要はデジタルからアナログへ移行させた。
時代の流れにあらがう改革は、すべて「天日にさらす」というテーマから導かれたものだ。ならば、日本バドミントン協会では何を「天日にさらす」のか。村井は「ガバナンス改革が喫緊の課題だと思っています」と副会長への就任会見で語っている。
「組織の司令塔となる評議員会、そして理事会が極めて重要になってきます。特に今回は理事会がしっかりと機能していたかどうか。ほとんどの場合において、交通渋滞は先頭がまごまごしていると発生します。なので、スピード感を持って、司令塔となる理事会の改革ができるかどうか。開かれた理事会になっていくためには外部の血を入れて、多様性を重視していく。こうしたところから始めていければと思っています」