元Jリーグチェアマン村井、今度はバドミントン組織を天日にさらす

日本バドミントン協会副会長・次期会長村井満が語る、信念の組織改革


日本バドミントン協会の定款で、理事は15人から20人の間にすると定められている。村井を招へいする前の時点で、中村会長は女性理事を40%、外部理事を25%とする改革案を示していた。会長を引き継ぐ予定の村井も、もちろん異論はない。

「具体的にどのような人材が必要なのかが自分の中でまだ定まっていないので、まずは独り身で入ったうえで、必要な条件を自分なりに踏まえて人選していきたい。

ただ、これまで許されていたことが許されなくなった時代観、閉鎖的な中では認められることが外では認められない、といった観点のずれが生じていたとすれば、他の競技を知る方や日本社会のすう勢や変化を知る方に指摘してもらわなければいけない。未来志向を客観的に指摘できる方を起用したいと思いますし、時には私に対して耳障りの悪いことも言っていただける方を身近に置けるかどうかがポイントになると思っています」

1時間近くに及んだ記者会見が終わった後に、村井の発案で囲み取材が設けられた。会見の会場となった都内ホテルの部屋の使用期限が迫っていた中で、さらに「もしも質問が尽きなければ、場所を変えてでもやりましょう」ともつけ加えた。

驚いた記者の一人が「今後の理事会でも、このように対応していただけるのでしょうか」と尋ねた。それまでは会長が不在というケースが多く、専務理事が対応していたという。村井も驚いたように「えっ、まあ当然のことだと思います」とこう続けた。

「数多くのメディアの方々が発信者となっている中で、ここだけの話といったことは通用しない社会になっています。逆に言えば私たちにとって不都合なことであるとか、まずいと思うことから真っ先に開示していく姿勢でなければいけない。なので、私はJリーグ時代から『記者と犬は逃げると追ってくる』と言い続けてきました。

メディアにも常に真正面から、真摯に向き合っていく。Jリーグ時代から変わらない村井の姿勢に2つ目の信念となる「記者と犬は逃げると追ってくる」が反映されている。

最初に掲げた「天日にさらす」にも通じる信念を、村井は「オーナーシップですよね。要はバドミントンとは誰のものか、ということ」と原点に帰る思いも込めて説明する。

「理事会のものではないし、ましてや評議員会のものでもない。実際にプレーをする選手たち、そしてプレーを楽しむファンの方々のものであると考えれば、メディアを介して国民のみなさんへ向けて情報をすべて開示した上で、耳障りの悪い意見も含めて世の中から叩かれながら、軌道修正をしていく姿勢が大事になってきます。

コロナ禍では記者会見を70回開いた年もありましたし、その中で当時の社会の問題点や関心事が見えてきました。何かを隠そうとか、コントロールしようと思ってもできません。その意味でも、メディアのみなさんが自分たちの鏡になっていただければと思っています」

「否決」の壁

村井が新理事に選任された臨時評議員会では、実は、今後に大きな影を落とす“事件”が起きていた。元職員による横領の隠蔽に関与したとされる理事6人・監事2人に対して提出されていた解任動議が「否決」されたからだ。
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文=藤江直人

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