健康

2023.02.24 09:00

現代人の脳は疲れすぎている 認知機能の低下を抑える「ウコン」の可能性

認知症は、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などに分類されますが、いずれも学習や記憶に関わる神経細胞(ニューロン)が死に至り、認知機能障害が現れます。

そのうち、日本国内の認知症患者数が最も多いとされるアルツハイマー病は、発症の約20年前からアミロイドベータ(Aβ)という物質が脳内で凝集・蓄積し、タウ蛋白が過剰にリン酸化され、その後神経原線維変化を経て発症すると言われています。

研究の結果、クルクミンには、Aβの蓄積とタウ蛋白のリン酸化を抑える可能性があることが、明らかとなってきました。

クルクミンを豊富に含むカレーを頻繁に食べる人は認知機能が高いとされており、実際にカレー文化が根付くインドの人々は、米国人と比較して認知症の発症率が低いという報告もあります。

鬱症状の軽減や集中力の向上にも

これまでの研究報告から、クルクミンのそのほかの効能も紹介します。

まず、気分の落ち込みといった鬱症状の軽減のほか、集中力の向上など、精神症状に対する有用性が期待されています。そのメカニズムとして、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの産生を、クルクミンが促進することが挙げられます。

さらに、感情を司る神経細胞を成長・維持させるBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の分泌量が、クルクミンの摂取によって高まることも報告されています。BDNFは運動によって分泌が促進されますが、同様の作用がクルクミンにもあるということで、ビジネスマンの日々のメンタルコンディションを整える方法として利用できるかもしれません。

加えて、癌や変形性膝関節症といった慢性炎症に関連する疾患に対しても、研究が盛んに行われています。研究によると、クルクミンはNF-κBという核内転写因子をターゲットに抗炎症作用を発揮するとされています。

このように、クルクミンは二日酔い対策に留まらず、様々な機能を発揮することが明らかになってきました。

ただ、過剰摂取には注意が必要です。健康のためにウコンを自身で栽培し、毎日刻んで摂取している人もいるそうですが、ウコンに含まれる鉄分の蓄積によって炎症が起こり、肝障害(急性肝炎など)を起こすという事例もあるようです。

そのためクルクミンの摂取には、鉄分を除去している品質の確かな健康食品などを選択することが最適だと考えられます。

クルクミンは吸収性が低く、生体内の利用効率が悪いといった課題も挙げられますが、近年製剤の技術革新でナノ化によってクルクミンの吸収性を高めたものも表れ、より一層その恩恵を受ける様になりました。またサプリメントで定番のイチョウ葉エキスなど、血流改善素材と組み合わせることでの相加作用も期待されています。

カレーの摂取も含めて、日々の健康維持やビジネスパフォーマンスの向上に、クルクミンを活用してみてはどうでしょうか?

【参考文献】
・Fusheng Yang et al, Curcumin Inhibits Formation of Amyloid β Oligomers and Fibrils,
Binds Plaques, and Reduces Amyloid in Vivo, THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY(2005)
・Gary W. Small et al, Memory and Brain Amyloid and Tau Effects of a Bioavailable Form of Curcumin in Non-Demented Adults: A Double-Blind,Placebo-Controlled 18-Month Trial, Am J Geriatr Psychiatry(2017)
・Tze Pin Ng et al, Curcumin-Rich Curry Consumption and Neurocognitive Function from 4.5-Year Follow-Up of Community-Dwelling Older Adults (Singapore Longitudinal Ageing Study), Nutrients(2022)
・Mary Ganguli et al, Apolipoprotein E Polymorphism and Alzheimer Disease The Indo-US Cross-National Dementia Study, ARCH NEUROL(2000)
・Ying Xu et al, The effects of curcumin on depressive-like behaviors in mice, European Journal of Pharmacology(2005)
・Jonathan K. Wynn et al, The effects of curcumin on brain-derived neurotrophic factor and cognition in schizophrenia: A randomized controlled study, Schizophrenia Research(2018)
・水野海騰ら,イチョウ葉エキス,クルクミン,L-カルニチン,ヒハツエキス,糖転移ヘスペリジン配合ドリンクの摂取による脳賦活・体質改善に及ぼす影響,薬理と治療(2020)
・Sanjaya Singh et al, Activation of Transcription Factor NF-kB Is Suppressed by Curcumin (Diferulolylmethane), THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY(1995)

文=高田浩孝

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