マーケティング

2023.02.23 08:30

米版100円ショップ「ダラーストア」 インフレの影響で成長モードに

3. 来店客数

ダラーストアはパンデミックよりも前に食品分野への取り組みを開始していました。Dollar Generalは、2019年に「DG Fresh」の取り組みを開始し、生鮮・冷凍食品を品揃えに加え、コールドチェーン消費財の流通を強化しました。

同じくDollar Treeは、2018年に「Snack Zone」というコンセプトを導入し、冷たい飲料、キャンディ、スナックなどの、すぐに飲食ができる軽食を通じて売上増を図りました。パンデミックにより食料品店への来店客数が急増し、感染の可能性を最小限に抑えることができるワンストップショップ型小売店への需要が高まったため、こうした取り組みは時流に合っていることが証明されました。

そして、利用客はインフレに見舞われた2022年においてもダラーストアを愛用し、食品の購入先として選択し、来店数の増加が促されました。2019年と比較すると、両大手ダラーストアチェーンの来店客数は高止まりしており、ここ数カ月は2桁の伸びを示しています。この伸びの多くは、過去3年間の新規出店によるものが大きな要因ではありますが、ダラーストアが打ち出している施策が功を奏しているとも考えられます。

図5. Dollar GeneralとDollar Treeの来店客数(対前3年比)
(図内の訳、コメント「食品への取り組みが功を奏していることを要因の一つとして、ドルストアの来店客数は2019年と比較すると大きな伸びを示している」) 出典:Placer.ai
(図内の訳、コメント「食品への取り組みが功を奏していることを要因の一つとして、ダラーストアの来店客数は2019年と比較すると大きな伸びを示している」) 出典:Placer.ai

4. 店舗網の拡大ダラーストアは、消費者は今後も実店舗でのショッピング体験を求めることを認識しており、全米のその他小売業者が実店舗の運営を縮小しているにもかかわらず、その拡大に多額の投資を行っています。両チェーンは、小売のサービスが行き届いていない地域、主に人口密度の低い地方や、低所得者層の都市部や郊外の地域を特定するノウハウを培ってきました。

Dollar Generalは、2019年11月から2022年11月まで、年平均1018店舗を純増させました。一方で、同期間におけるDollar Tree/Family Dollarの拡大は、Dollar Treeが年平均211店舗、Family Dollarが年平均104店舗と、比較的控えめです。

当社では、ダラーストアと重複が大きいスーパーマーケットチェーンは、今後数年間、深刻な利益率圧迫のリスクにさらされる可能性が高いと考えています。

図 6. Dollar General、Dollar Tree、Family Dollarの店舗数
(図内の訳、コメント「Dollar Generalは2020年から2021年11月にかけて最も多く店舗数を増やしている」) 出典:ChainXY/Coresight Research(図内の訳、コメント「Dollar Generalは2020年から2021年11月にかけて最も多く店舗数を増やしている」) 出典:ChainXY/Coresight Research

Dollar General:Dollar Generalは2022年11月現在、47州に店舗を展開しており、東部、南部、南西部、中西部地域に集中しています。同社によると、現在、米国人口の約75%が同社の店舗から5マイル以内に住んでいるとしています。

Dollar Generalは、比較的低い初期投資と低コストの運営モデルなどの優れた店舗戦略を武器に、現在に至るまで店舗数を増やしています。同社の店舗形態は農村部独特のもので、米国の農村部では人口密度が低く、公共交通機関が少ないため、便利な小売の選択肢として成功するための理想的な条件を揃えています。

図7. Dollar Generalの店舗分布図
出典:ChainXY/Tableau/Coresight Research

Dollar Tree:Dollar Treeは、全米48州で都市部と郊外に店舗を展開しています。同社は長期的には、全米でDollar Tree1万店舗以上、Family Dollar1万5000店舗以上の成長ポテンシャルがあるとみています。

図8. Dollar Tree/Family Dollar店舗分布図
出典:ChainXY/Tableau/Coresight Research出典:ChainXY/Tableau/Coresight Research
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文=RxR Innovation Initiative

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