米版100円ショップ「ダラーストア」 インフレの影響で成長モードに

Dollar General store / Getty Images

日本の「100円ショップ」に相当する米国のダラーストアは、食品に力を入れてきており、従来の食品小売店、量販店、倉庫型クラブ、コンビニエンスストアなど、他の食料品店と直接競合するようになっています。

本記事では、米国における2大ダラーストア、Dollar GeneralとDollar Tree(Family Dollarを運営)に焦点を当て、米国の食料品市場におけるダラーストアの市場規模、独自の調査データによる購入者層の内訳、来店動向、店舗拡大戦略について検証します。

市場規模と機会

ダラーストアは、食品の品揃えを充実させることで、ドル商品と食品の境界線をあいまいにしようとしています。食品の平均的な利益率は一般商品よりも低いものの、食品の品揃えを充実させ、大量の商品を販売することで、ダラーストアは、特に農村部や低所得者層にとって、手頃な価格の食品や生活必需品の重要な購入先となっています。

米国の食品支出全体に占めるダラーストアの割合は徐々に増えてはいるものの、依然としてニッチなチャネルであり、2022年には食品支出全体のわずか3.3%だったと推定されます。しかし、より健康的な食品の選択肢を増やして食品の品揃えを充実させる取り組みを続けることで、支出や市場のシェア拡大につながるとみています。

例えば、Dollar Generalは2022年3月に、2023年度中に生鮮食品の取り扱い店舗を1000店舗追加する計画を発表し、生鮮食品を提供する店舗数は合計で3000店舗以上になることを目標にしています。また、6月には、今後数年間で、そうした店舗数を最大1万店舗に拡大する計画を発表しており、その多くは米国農務省が現在フードデザート(食品の入手が困難な地域)と定義している地域で展開される予定です。

同様に、Dollar Treeも食品と生活必需品の品揃えをさらに充実させることに重点を置き、Family Dollarの店舗を改装しています。

食料品小売業者は、両ダラーストアによる食品への進出が重大な脅威となるかどうか注視する必要があるでしょう。両社が自社ブランドに付随する低価格を維持しつつ、生鮮食品の品質を向上させ続けることができれば、既存の消費者層に対する価値提案を強化し、高価格帯の小売企業から新規顧客を引き込む可能性も高くなります。

また、低価格、小規模店舗、限られた品揃えを特徴とする同様のビジネスモデルを運営するAldiや Save A Lotなどの食品ディスカウント店に対する圧力も高めることができるでしょう。

図1. Dollar GeneralとDollar Treeが食品・消費財売上高(左軸、10億米ドル)および米国食品支出全体に占めるシェア(右軸)
※Dollar Generalの消費財カテゴリーには、パッケージ食品、生鮮食品、菓子、紙・清掃用品、健康・美容品、ペットフード、タバコが含まれます。 ※Dollar Treeの消費財カテゴリーには、冷凍・冷蔵食品、キャンディ、紙・化学品、健康・美容品などが含まれます ※2021年度の年度末調査(Dollar Generalは2022年1月28日、Dollar Treeは2022年1月29日) 出典:各社企業レポート/Coresight Research※Dollar Generalの消費財カテゴリーには、パッケージ食品、生鮮食品、菓子、紙・清掃用品、健康・美容品、ペットフード、タバコが含まれます。 ※Dollar Treeの消費財カテゴリーには、冷凍・冷蔵食品、キャンディ、紙・化学品、健康・美容品などが含まれます ※2021年度の年度末調査(Dollar Generalは2022年1月28日、Dollar Treeは2022年1月29日) 出典:各社企業レポート/Coresight Research
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文=RxR Innovation Initiative

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