政治

2023.02.17

ロシアは動員で兵士を倍増させるも死傷者も倍増

Getty Images

ロシアの当局者は昨春には兵士不足の問題を抱えていることを認識していた。ウクライナに侵攻してまだ数カ月しか経っていなかったが、攻撃開始時に投入された20万人ほどのロシア軍兵士のうち、すでに5万人が死傷していた。

そこでロシア大統領府は新たに30万人を動員し、同時に影の民間軍事会社ワグネル・グループもロシアの刑務所から数万人の受刑者を徴集した。損失分を考慮しても、ロシア軍はわずか数カ月でおよそ倍に膨れ上がった。

だが、それでもロシアが抱える根本的な問題は解決されなかった。というのも、死傷者も2倍になったからだ。

フォーブス・ウクライナのコラムニストで、ウクライナ国防省の改革チームの元メンバーであるヴォロディミール・ダチェンコはオープンソースのデータを分析し算出した結果、夏の動員前、ロシア軍の兵士はウクライナで1日あたり約380人死んでいた。それが動員後は1日650人とほぼ倍増している。

ロシアはウクライナでの死傷者を大がかりな動員で補った。しかし今、ロシアは兵士不足でさらに墓穴を掘っている。それは2回目の動員を必要とし、さらなる兵士不足の問題へとつながる可能性がある。この問題は延々繰り返される。

このような事態の原因を理解することがこの戦争の力学を理解する鍵だ。ロシアの指導者たちは戦争を続けると決めている。ウラジミール・プーチン大統領や内閣、議会、地方の知事にとって、軍が戦い続ける限り兵士が何人死のうが問題ではない。

ロシアの指導者、加担するメディアそして臆病な国民は軍が戦っている限りどんなに大きな犠牲を伴っても軍の奮闘を勝利と言い換えることができる。

そのため、ロシアは長期戦に向けた戦力を生み出す体制を構築する努力も、その体制を過度に活用しないよう前線での作戦を調整する努力もしなかった。

昨春、戦争が短期間で終わらないことが明らかになったとき、ロシア軍が最初にしたことは訓練基地の「急襲」だった。ロシアの旅団には通常、戦闘を担当する2つの大隊と訓練を行う1つの大隊の計3つの大隊が含まれる。いわゆる「3番目の大隊」を前線に送ることはできるが、そうすると新兵を訓練する能力を失う。そうなると旅団はもはやそれなりの水準の戦闘即応態勢を整えることができない。


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翻訳=溝口慈子

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