だが陸軍の訓練施設では、送り込まれた新兵を死傷した兵士と同じような熟練度にする見込みはなかった。少なくとも、夏から秋にかけてウクライナ軍が急速に規模、技術、火力を増強する中で、ロシア軍の戦力を維持できるほどすばやく新兵を訓練できなかった。
訓練を受けておらず、戦闘に適していない新兵は前線に着いて戦闘に加わるなり、すぐに負傷したり死んだりした。こうした悲劇をリアルタイムで見るには、ウクライナ東部ドンバス地域のドネツクの南西約40キロに位置するロシアが占領したパブリフカから北に約1.6キロいったところにあるヴフレダルという町の占領を目指したロシア軍の「攻勢」を観察すればいい。
2週間ほど前から、2つの海兵隊旅団とタタールスタン共和国から新たに動員されたボランティアによる旅団の計3つの旅団が、パブリフカとヴフレダルの間にある広大な地雷原を越えようとしている。
ロシア軍の旅団はここを突破できないだけでなく、何度も突破を試みては驚くほど多くの死傷者を出している。ロシア軍は2月6日の週に1日で1つの大隊(30両以上の車両ともしかすると数百人の兵士)をまるごと失った。その後の攻撃も成功したとはいえない。
ロシア側のずさんな計画と支援不足、そしてウクライナ側の巧みな戦術が理由だ。だが訓練のせいでもある。つまり、訓練不足だ。動員されたばかりのロシア軍兵士は攻撃を受けながら地雷原を突破する術を知らず、その上規律もない。
これは病んだロシアが生み出した現実だ。ロシア政府は驚くほどの損失を出している中で勝利しているかのように見せかけるのに必死で、訓練を受けていない徴集兵を急いでウクライナの戦場に送り込んだ。この徴集兵は自分達が送り込まれる前に戦っていた兵士たちよりも短期間で死んでいて、2回目の大量動員は必至だ。これを回避する唯一の選択肢はロシアがウクライナから撤退することだが、プーチンあるいはプーチンのような人物が権力の座についている限り、それはあり得ない。
だが2回目の動員は1回目の動員以上に芳しいものにはなりそうにない。ロシア政府は戦力を生み出す体制の問題を解決していないため、今年徴集される人は昨年徴集された人より多くの訓練を受けることはないだろう。むしろ訓練はさらに少ないかもしれない。
つまり、ロシア軍の1日の死亡者数が今年再び倍になったとしても驚きではない。戦争が始まった2022年には27万人ものロシア軍兵士が死傷した。2年目には死傷者の累計が100万人近くに達する可能性がある。
(forbes.com 原文)