経済

2023.02.17 09:00

キーワード「SBNR」から考える。消費、つながり、社会、どう変わる?

「『利便性は共有』され、『意味性は所有』されていきます。この地域は特定のサービスしか使えませんとなれば、それ以外のサービス利用者は住んでくれません。また、これは誰でも使える・手に入るものですと言われれば、そこに特別性を感じない。オープンの方がたくさんの人に使ってもらえるけど、クローズドだから価値を発揮しているものをオープン化すると当然ながら価値が損なわれます」

だとすれば、生活のベースとなるインフラ領域は利便性をオープン化して高めつつも、地域やラグジュアリーブランド、コンテンツなどは意味性でそれぞれ独自の魅力を追求していくのが理想だろう。さらに利便性においても、個々の地域ごとのカスタマイズは必至であり、そこでもSBNRやファンダムに見られる「心地よさ」「支援」「共助」といった考え方は重要となってくる。ただ、個人の欲望や豊かさが優先されるのではなく、つながり合い共生と共存と共創が生まれるビジョンを描けるかも課題である。

サービスを享受する時代から、拠り所を選び、個人が他者を思いながら行動していくコンピテンスを重んじる時代へ。分散するなかで起こる理想の共鳴とそれを支援するシステムが、今後の生活面にも経済面にも光明をもたらすのではないか。


はない・ゆうた◎編集者。エディトリアルをバックボーンに、世の中の文脈を鑑みた、または先見性を持った戦略、クリエイティヴに従事。季刊誌『tattva』編集長。受賞歴に日経広告賞部門優秀賞など。共著書に『カルチュラル・コンピテンシー』がある。

鈴木謙介◎社会学者、関西学院大学准教授。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員教授。1976年生まれ。専攻は社会学。情報化社会の最新事例の研究と、政治哲学を中心とした理論的研究を架橋させながら、独自の社会理論を展開。

柴 那典◎音楽ジャーナリスト。1976年生まれ。ロッキング・オン社を経て独立。音楽やビジネスを中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』、共著に『渋谷音楽図鑑』。

藤井保文◎ビービット執行役員CCO兼東アジア営業責任者。2011年ビービットに入社、上海・台北・東京を拠点に活動。国内外のUX思想を探求し、実践者として企業・政府へのアドバイザリーに取り組む。著書に『アフターデジタル』シリーズ。

文=花井優太 イラストレーション=ジャコモ・バグナラ

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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