しかし米国の世間は、大学の他の部分、例えば、学費がいくらかかるか、フットボールチームが勝ったかに注目することの方が多い。また最近では、一部政治家の熱心な働き掛けにより、多様性や公平性、包括性に関する取り組みに大学が投じる費用についての関心も集まっている。
米国の高等教育に対する最近の世論では、興味深い分断が見られる。高等教育の価値に疑念を抱く国民が増加している一方で、大多数の国民は研究大学が重要な科学的発見とその実用化にとって重要な役割を果たすと評価しているのだ。
昨年10月にシカゴ大学が開始したキャンペーン「The Day Tomorrow Began(明日が始まった日)」は、同大学で過去にあった画期的な発見の重要性と影響に光を当てるもので、こうした研究大学の価値を効果的な形で発信している。
このキャンペーンでは、ビデオやポッドキャストなどのオンラインメディアを用い、シカゴ大学の発見がいかに世界を変え、今もなお影響を生み続けているかを紹介している。取り上げるトピックはさまざまで、例えば初回では同大の研究者がブラックホールの発見に貢献したことが紹介されている。
今後は、がんの発見、炭素年代測定、社会福祉、原子核反応、経済、表現の自由などのテーマを取り上げ、これらの分野での同大の発見が現在に続く研究の基礎を築いたことを示す予定だ。
キャンペーンを発案したシカゴ大学広報部を率いるポール・M・ランド広報担当副学長は最近のインタビューで、この企画は自身が司会を務めるシカゴ大学のポッドキャスト「Big Brains(偉大な頭脳たち)」から発展したものだと説明した。同ポッドキャストは現在100以上のエピソードがあり、同大で特に人気の広報活動の一つになっている。
ランドは今回のキャンペーンについて、「大学の画期的な研究を、一般の人がアクセスしやすく、その重要性を理解できるような方法で紹介すること」を目指したと述べている。
これまで他の一流大学も、自校の研究と学術の影響に関する広報に取り組んできた。米国、英国、カナダ、欧州、アジア、オーストラリアの一流研究大学が2009年に共同で立ち上げたウェブサイト「Futurity(フューチュリティ)」では、それぞれの大学の科学者による最新の発見が紹介されている。また、米国の公立・私立の研究大学65校で構成されるアメリカ大学協会(AAU)は、加盟校の研究成果を定期的に紹介している。
しかし、シカゴ大学のキャンペーンは、マルチメディアを駆使した充実した内容であると同時に、過去のブレークスルーと現在のイノベーションとの関連性を示している点で、ユニークな取り組みとなっている。
(forbes.com 原文)