昨年5月に立ち上げられたEHLIは、人種や年齢、性別に関して差別的だったり不快な印象を与えたりする恐れのある100以上の単語をリスト化。IT業界で使われている差別的表現などをなくす上での指針を目指したもので、学内での「使用禁止用語」を定めるものではなかったが、多くの人はこの点を無視して同イニシアチブへの批判を展開した。
特に物議を醸した項目の一つに、「アメリカ人(American)」ではなく「米市民(U.S. Citizen)」を使うべきだというものがある。「南北アメリカ大陸で最も重要な国は米国だと示唆してしまう」というのがその理由だ。他にも大きな反発を呼んだ指針としては、「マスター(master)」(奴隷主を想起させるため)や「白書(white paper)」(白=良いという価値観を示すことで、無意識の人種的偏見を助長するため)は使用すべきではないというものがある。
EHLIの問題は、こうした表現を日常的に使用している人々の動機や文脈を考慮していないことにある。結果、こうした表現を悪意なく使っているまっとうな人々までもが悪者扱いされてしまう。
有害とされた単語やフレーズの多くは日常表現であり、悪意ある意味からは切り離されている。まっとうな人は、そのような意味を念頭に置いてこれらの言葉を使用することはない。例えば教員が「自分の論文はblind review(盲査読)中だ」と語ったとしても、それは決して視覚障害者を侮辱しているわけではない。
この手の検閲は、言論の自由を阻害するだけではなく、実際に人々を傷つける目的で使われる表現をめぐる問題を覆い隠してしまう。
スタンフォード大学のマーク・テシエラビーン学長は声明で、EHLIは大学の方針を示したものではないと説明。EHLIのリストが「学内での言論の検閲やキャンセルに使用されることへの懸念を多くの人が表明した」ことは認識しており、言論と学問の自由を擁護する同大の指針に変わりはないと強調した。
(forbes.com 原文)