現在、世界中の専門家が、ロシアによるウクライナへのサイバー攻撃を研究しています。専門家のなかには、「ロシアと同じような考え方をもっている国々が、政治的な目的を達成するために、似たようなサイバー攻撃を仕掛ける可能性がある」と指摘している人もいます。
2022年9月に、イランのハッカーがアルバニア政府をサイバー攻撃したケースが報じられました。イランの反体制派を国内に滞在させているアルバニアにサイバー攻撃を実施したのです。同様の動機で、敵対国にサイバー戦争を仕掛ける国々も今後出てくるでしょう。
常に手口が変化していくサイバー空間では、古いルールや政策はもはや通用しません。今こそ、各国が新しいルールの策定を始めるべきではないでしょうか。
では、誰がそうした新しいルールを率先して作れるのか。ウクライナはそのための実験場となっており、われわれは自分たちの戦時下の経験と専門知識を、提供することができます。
攻撃は止まらない、食い止めるのみ
──ウクライナを支援する国々に対してどんな協力を期待していますか?サイバー攻撃を効果的に撃退するためには、国際協力が重要な柱の一つになります。侵攻前から、われわれはパートナーの国などと積極的に協力してきました。
ウクライナ政府の緊急対応チーム(CERT-UA)は、世界90カ国と繋がっており、協力関係にあります。これによって、サイバー攻撃に関する情報をリアルタイムで共有することが可能になりました。
実際、侵攻前の1月14日、ロシアから激しいサイバー攻撃を受けたとき、パートナーであるアメリカとイギリス、EU(欧州連合)などから支援をしてもらいました。こうした国の専門家らが攻撃に対応するためのコンサルティングを行なって、ロシアからのサイバー攻撃の調査を実施しました。この協力関係は、ロシアの侵攻後、さらに強化されました。
大手のIT企業も各国からウクライナに駆けつけてくれています。そのおかげで、多くの最新技術やセキュリティソリューションに触れることができ、課題の多かったウクライナの公的機関や民間企業が、最新のサイバーセキュリティシステムを導入できるようになりました。
ロシアが攻撃を止めることはないでしょう。それはウクライナ軍が敵を国から追い出しても継続されるだろうと考えています。ただそれを食い止めるのみです。
──日本には何か期待しますか。
日本は、ロシアからの制裁が始まった直後、いち早くウクライナを支持してくれました。日本国民と政府に感謝しています。
2021年9月に、SSSCIPの代表が、NATO(北大西洋条約機構)日本政府代表部副代表の小川秀俊氏と会談しました。われわれは、サイバーセキュリティセンターを紹介し、両国間のサイバーセキュリティ関係の強化に向けた情報交換を求めました。経験と知識の交換を視野に入れ、日本との協力を深めていければ嬉しいです。