働き方

2023.02.07

齋藤孝流、苦境から抜け出すヒント──読書をしない人に未来はない

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「大人の語彙力ノート」「読書する人だけがたどり着ける場所」「本当の『頭のよさ』ってなんだろう?」「孤独を生きる」など、さまざまなテーマでベストセラーを次々に送り出しているのが、明治大学の齋藤孝教授です。

専門は教育学や身体論ですが、ビジネスパーソン向けの著書も少なくありません。教育の専門家が、なぜビジネスパーソン向けの本を書くのでしょうか。また、テレビのコメンテーターとして、なぜ鋭いコメントを発せられるのでしょうか。

そこには、齋藤さんの持つ苦しい時代の経験がありました。東京大学法学部を卒業後、同大学で大学院教育学研究科に進むのですが、博士課程で満期退学。その後、しばらく定職に就けなかった時代があるのです。インタビューでは、こう語っていました。

「20代は、転職どころか最初の職にも就けませんでした(笑)。これは本当に苦しかった」

ですが、このときの経験が後に大きく生きることになるのです。大ベストセラーとなった「声に出して読みたい日本語」(2001年)も、この苦しい時代にヒントを得ていました。

「8年間、60代以上の人に市民講座などで教えていました。だから、年配の気持ちをよく知っていました。『声に出して読みたい日本語』は、この経験が役立っています。年配者から火が付く本にしたかったから、文字の大きさにはこだわりました。彼らが、小さな文字を読むのにいかに苦労していたか、僕はよく知っていたんです」

そして苦しい状況のなかでも、まったくひるんではいませんでした。

「絶対、10倍にしてお返ししてやるって思っていました(笑)。『本が売れて良かったですね』なんて言われることがありますが、まだまだ勘弁してやらないですよ(笑)。もっともっと仕事をさせてもらわないと、あのときの借りは返せない。そのくらい苦しい時代でした」

周囲にも「いつかやってやる」と言い続けていたといいます。

「僕はこんなものじゃないという意識が強かった。そう言えるだけの勉強をしていました。質の高さだけでなく量も追っていた。日本でこれ以上勉強しているヤツはいないだろう、というくらいの勉強をしました」

その自信があったからこそ、自分を信じることができたのです。

読書をしない人に未来はない

インタビューでは、すぐれたビジネスパーソンになるためのヒントを聞いていました。特に若い世代は、どんな意識を持つべきかについてです。

1つは、スピードを意識することでした。

「仕事ができる人は、仕事が早いものです。逆に、仕事ができない人は先送りしがち。これは口調に表れますね。会議などで『悩ましいね』『難しいかな』といった言葉が出る人はもうダメです。先送り発想が身に付いてしまっている」

仕事ができる人は、その場で全力でアイデアを絞るといいます。ここでやろう、すぐやろうという発想がある。その気迫がアイデアを生むというのです。
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文=上阪徹

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