大雪のため運航中止となった空港で、偶然出会った起業家の老人マックス・エルモア。日々の仕事にゆきづまりを感じ、未来に希望をもてなかったサラリーマンの“私”は、マックスの一晩だけの講義から、仕事との付き合い方やビジネスで成功するヒントを得ていきます。
本書を読んだのは大学2年生の時。ある授業の課題図書として読んだのが最初でした。よくあるビジネス本とは違う、ストーリー仕立ての読みやすい本でしたが、社会経験のなかった当時の私はまったく共感できず、要約をまとめるのに悪戦苦闘。正直、つまらない本だなぁと感じていました。
ただ、その後も私の本棚にあり続けたのは、大学時代に受講した、元マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン副社長の若松茂美先生の授業が熱意にあふれていたことや、優秀な同級生たちにたくさんの刺激をもらっていたから。背表紙を目にするたびに、その貴重な時間が思い出されました。
ようやくこの本の内容に共感できるようになったのは、社会人になってからです。外資系メーカーの経理担当として社会人生活をスタートした私は、不慣れなこともあって小さなミスを繰り返していました。ふと手にした本書の「大好きなことをしろ!」というマックスのアドバイスが心につき刺さったのは言うまでもありません。
私が大好きなこと。それは、「データサイエンス」です。このデータサイエンスを活用すると、例えば、小売り店舗でどのような動き、どのような買い物をしたお客さまが優良顧客になるのかを導き出すこともできます。学生時代、人には見えないものを見せてくれるデータサイエンスの可能性を感じ、夢中で学んでいました。
データサイエンスを通じて社会に貢献したいー。本書に背中を押されるように起業したのは、2017年です。
当社は、データをつくり、使いこなすための知識とスキルを身につけるビジネススクールを運営しています。ふだん何げなく見ている風景や暮らしのなかにも、課題を解決する糸口や新しいビジネスを生み出すアイデアがたくさん埋もれています。仲間と切磋琢磨しながら、実際のデータと戯れるなかでデータサイエンスを学び、一人ひとりが新しいアイデアを見つけて、さらなる挑戦をする。このような教育にかかわりたいと思えたのは、間違いなく、大学時代の先生方のおかげです。
仕事がつまらないなぁと思うことは、誰にでもあるでしょう。そんなときは、本書を読んでみてください。きっと、「仕事を楽しむ」ための心構えが見つかるはずです。
title/仕事は楽しいかね?
author/デイル・ドーテン(訳 野津智子)
data/きこ書房 1430円/181ページ
デイル・ドーテン◎1950年生まれ。アリゾナ州立大学大学院卒業。80年にマーケティング・リサーチ専門会社「リサーチ・リソーセス」を起業し、現在は米国を代表する人気コラムニスト。本書は老人と私の出会いから始まる講義仕立てのストーリー。人気を博し第2巻や決定版などのシリーズが登場している。
かただ・ようすけ◎1982年生まれ。一橋大学商学部を卒業後、大手外資系メーカーなどを経て、2013年にサンフランシスコ大学に留学しデータ分析学修士を修了。14年に帰国後、トーマツや自然言語処理の企業でコンサルティングに従事。17年にデータミックスを創業。