「僕はよく『ぶつくさ言う前に量をこなせ』と言います。どんな仕事でも、絶対に断らない。素早く仕上げようと心掛ける。改善方法を考え、工夫しながら仕事を進める。そうすれば、必ず次の仕事につながります」
忙しい人に仕事は集まるものだと言われますが、なぜかといえば、効率よく仕事をする技術を知り、量的なタフネスも持っているからです。これが仕事を進める強力な武器になるというのです。
そして3つ目が、読書をすること。
「大量の読書をしない人には未来はない。思考能力は、読書によって鍛えられるんです。読書する人としない人には、思考能力に決定的な差がつきます。また、若いころは日記を書けと僕はよく言っていますが、文章を書くことはさらに思考能力を高めます。会話でも、含蓄のある言葉が使えるようになる」
書くことに習熟することで、会話のレベルも一気に上がるのです。
「年配の優れた経営者には、読書家がたくさんいます。読書で得られるのは、情報だけではありません。人間性、感情、論理性、想像力、そういうものも鍛えられる。僕は学生にドストエフスキーを読むことをすすめていますが、それは生きていくうえでの耐性を養えるからです」
目先の利益でない志やがパワーになる
このドストエフスキーをめぐるエピソードは、いまもよく覚えています。インタビュー中、逆に「上阪さんはドストエフスキーを読まなければいけない理由を知っていますか」と、突然聞かれたのです。そして、その理由を解説してもらいました。ドストエフスキーの小説には、人間というもののすべてが詰まっているというのです。特に、人間が生きる世界が、いかに理不尽で、無慈悲で、不平等で、不合理で、残酷なものであるかが語られている。それを理解して生きるのと、まったく理解しないで生きるのとでは、人生は大きく変わっていくのです。
何か苦しいことがあったとき、人は次のように思ってしまいがちです。「どうして自分だけ、こんな目に遭わないといけないのか」「こんなに努力をしているのに、どうして結果が出ないのか」と。
しかし、もし、そもそも人生は不公平で不平等で極めて厳しいもので、ラクな道などない、ありえないと認識していたとしたら、どうでしょうか。
成功者に数多く取材してきて、感じたことがあります。彼らは大変な努力や苦労をしているからこそ、大きな成功を手にしているのですが、本人たちはそれを大した努力とは思っていないのです。その気持ちの持ち方からして違うのです。