ビジネス

2023.02.02 09:30

大企業がイノベーション指向へと舵を切るためにすべきこと

では、大企業が母艦のアドバンテージを活かしつつ、硬直化や抵抗勢力の弊害を迂回、あるいは回避するにはどうすればいいのだろうか? イェイツによれば、企業文化を丸ごと変えようとするよりも効果的なやり方があるという。それは、「一つの新規事業を立ち上げて自分たちの能力を証明し、実際に才能、アイデア、社内の人脈を持っていることを証明する」方法だ。

規模の大きな企業が持つ固有のアドバンテージの一つが、顧客からの不満の声を把握し、不満を解消するために現在利用可能な技術を保有している点だ。こうしたアドバンテージを持つことの利点を、イェイツはこう解説する。

「(大企業の)CEOは、たびたび小さな賭けに出ることで、最小限の資本投下で、最大級のリスクを取り除くことができる。その企業に複数の良いアイデアがあるのなら、まずはポートフォリオのレビューを行い、大規模な組織改革を行わなくても実行可能な新規事業の見極めを図るといいだろう。逆に、多くの企業がこれまでに犯してきた過ちは避けたいところだ。それは、『たった一つの虎の子案件』に多額の資金をつぎ込むことだ。この場合、その案件が失敗に終わると、それから何年ものあいだ、新規事業を試すのはやめておこうという考えにつながる」

ある企業が、成功裏に新規事業を立ち上げ(さらにはスケールアップする)能力を実証できれば、さらにこの方面への取り組みを拡大して、最終的には新規事業を次々に生み出すベンチャーファクトリーをつくることも可能になる。そうなれば、旧態依然とした大企業を成長エンジンへと変えられるだけでなく、高い可能性を持つ人材の成長や能力開発において、他にはない強力な手段も手に入れることができる。

イェイツは、筆者に対してこう語った。「企業の、新規事業を立ち上げる能力が増せば、こうした事業は、高い可能性を持つ社員にとって、リーダーとしてのスキルを身につける機会になる。また、こうした事業がなければスタートアップに流れてしまうような有能な人材を招き入れ、引き留めるための素晴らしい手段として機能するだろう。有能な人たちも、こう考えるはずだ。『待てよ、大企業に就職して、その社内でもスタートアップのような仕事ができるだって? それならこっちを選ぶ!』と。これは、企業だけでなく、そこで働く社員をも成長させる道なのだ」

規模の大きな企業全体に、イノベーションを重視する姿勢を普及させるのは、非常に骨が折れるタスクではある。だが、大企業が持つアドバンテージをフル活用しながら、要所要所で小さく賭けに出れば、CEOの目の届く範囲内で、危険を避けながら、今まで顧みられていなかった成長への扉を開くだろう。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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