ビジネス

2023.01.24 18:30

ダボス会議で見えた、「ものづくりの復権」とウェルビーイングな世界のつくりかた

(c)WORLD ECONOMIC FORUM

2つ目の課題は、運用担当者自身が抵抗感を示すことがある点です。最新のテクノロジーを導入しても、それによって生活がどのように楽になるのか、反復的な作業からより付加価値が高くエキサイティングな業務へと移行できるのかを理解してもらわなければ、現場は混乱してしまいます。このことをうまく伝えられないと、テクノロジーの導入は非常に困難です。
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3つ目のボトルネックは、実用的なアプローチが不足している点にあると思います。多くの企業は、自分たちが何を解決しようとしているのかを明確にしないまま技術への投資を決めてしまいます。最新技術が登場し、それを使い始めたからといって、その規模に見合ったソリューションを展開できるとは限らないのです。

──最先端のテクノロジーを導入し、事業の変革につなげるためには明確な戦略とリーダーシップが必要ですね。次世代の製造業を牽引するリーダーは育ってきていると思いますか。

先ほどテクノロジーの導入で成功している企業について触れましたが、彼らは製造業のDXを自社の優先事項に掲げています。つまり、これらの企業にはテクノロジーを導入して自社のオペレーションを徹底的に変革するためのビジョンと、投資戦略を持っているリーダーがいるのです。
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また、若い世代の人たちと話していて非常に興味深いのは、「責任ある方法で変革しなければならない」という意識の高まりです。単にコスト効率や生産性にこだわるだけでなく、持続可能性や労働力の確保、気候変動対策など、世界規模で重要な影響を及ぼす分野に目が向いています。新たな世代が(製造業に対する)考え方を変えつつあるとも感じます。彼らは非常に良いお手本です。

──日本はかつて「ものづくりに強い国」と言われていましたが、今は自信を失っているようにも見えます。あなたの目には、日本の製造業はどのように映っていますか。

製造業に新たなデジタルレイヤーを追加する点において、日本企業はかなり追いついてきたと思います。たとえば日立製作所は、日本に高度な製造拠点があることを示している事例のひとつです(注:茨城県にある「日立製作所大みか事業所」は幅広い産業用IoT技術と業務データ分析が活用されているとして、20年1月に世界経済フォーラムから「Lighthouse」[先進的な工場]に認定された)。

日本が製造業をリードする国であることに変わりはないと思います。もちろん課題もありますが、それはどの国においても同じです。たとえば、高齢化が進んでいるのは日本だけの問題ではありません。ヨーロッパでもアメリカでも、すべての先進国で起こっている問題なのです。

日本が直面している課題は内側から見ると独特で、それゆえに苦戦していると思うかもしれませんが、グローバルなつながりを持つと、課題は世界共通であると気づくことができるのです。

文=瀬戸久美子

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