経済

2023.01.23

2023年「ダボス会議」が閉幕。世界経済フォーラム日本代表が語る成果と今後

(c)WORLD ECONOMIC FORUM

「分断された世界における協力の姿」をテーマに、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会2023(通称「ダボス会議」)が1月20日に閉幕した。

世界経済フォーラム総裁のボルゲ・ブレンデは閉会の辞で、今回の年次総会では特に食糧、エネルギー、気候という最も緊急な危機への取り組みで進展が見られたとし、「今日、世界はより分断されているが、明日もそうである必要はないというのが、私がこの一週間で得た最大の教訓だ」と述べた。

2023年の「ダボス会議」の成果は。次の年次総会に向けて、日本の世界経済フォーラムのコミュニティが取り組む課題は。世界経済フォーラム日本代表の江田麻季子に話を聞いた。





江田麻季子◎世界経済フォーラム日本代表。米国の州立大学で修士号(社会学)を取得後、大学病院などでマーケティングに携わる。1997年に帰国し、企業勤務を経て2000年にインテル入社。13年から同社代表取締役社長を務めたのち、18年4月より現職。

──2023年の「ダボス会議」の成果は。

まずは、コロナ禍を経て3年ぶりに、1月のダボスに2700人以上が集うことができたのは大きい。閉会の挨拶で総裁のブレンデが50を超えるイニシアティブを発表したが、限られた時間内では紹介し切れないほど多方面にわたり多くの成果を残すことができた。

何より、昨年5月に開催したときよりも参加者の顔が明るかったのが印象的だった。コミュニティの皆に会えた、目を見てしっかり話ができたことが大きいのだろう。参加者からは、さまざまなテーマについて建設的な議論を展開できたとの声が多く聞かれた。

閉会直前に行われた世界経済の見通しについてのセッション(注:国際通貨基金専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ、日本銀行総裁の黒田東彦、欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルド、フランス経済・財務・産業およびデジタル主権大臣のブリュノ・ル・メール、元アメリカ財務長官のローレンス・サマーズが登壇)では、立ち位置が異なるヨーロッパとアメリカが、話し合いを通じて解を探っていく様子を見ることができた。同様の盛り上がりは年次総会全体を通じて感じられた。

アメリカが産業政策に力を入れている様子も非常に印象深かった。おそらく、アメリカ一国で勝つというよりも、世界各国と協力体制を築きながらやっていくという姿勢の現れだろう。「補助金戦争」のようにならないようにすることは大切だが、気候変動対策や貧困対策といった大きな課題の解決に向けて、各国が立ち位置を確認しながら投資を進めていくことが確認できた。

──次の「ダボス会議」に向けて、引き続き世界の課題解決への取り組みが続きます。これから1年内に、特に注力したいことはありますか。

世界経済フォーラムの日本代表としては、コミュニティに参加している日本の人たちが直面している課題や、エナジートランジションなど皆で取り組みたいことには一層注力していく。

加えて、これまではグローバルの活動に日本の人たちの参加を促すスタイルを取ってきたが、今後は日本が直面している課題にも目を向け、インクルーシブな新たな資本主義の形を見出すことで国外の学びにつなげることもできるのではと考えている。経済や社会の構造を変革し、長寿かつ健康で、生産性が高い国をつくるにはどうすればいいか。これらのテーマも日本のコミュニティ内で取り組むかもしれない。

とはいえ、1年は長い。世の中の状況は刻一刻と変わってゆく。世界のニーズを深く読み解きながら、スピード感をもって、ベストなタイミングで効果的な活動をしていきたい。

文=瀬戸久美子

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