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2023.01.24

ダボス会議で見えた、「ものづくりの復権」とウェルビーイングな世界のつくりかた

(c)WORLD ECONOMIC FORUM

1月20日に閉幕した、世界経済フォーラム年次総会2023(通称「ダボス会議」)。開催期間中、喫緊の課題として頻繁に話し合われたのが気候変動対策である。

気候変動に大きな影響を及ぼしている産業のひとつが「ものづくり」だ。今回のダボス会議では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とサステナビリティ、包括的な労働力の確保を加速するための取り組みである「グローバル・ライトハウス・ネットワーク・イニシアチブ」を一層拡大するために製造業8社が協力し合い、リソースを結集するとの約束が結ばれた。

果たして、製造・生産業は経済性と持続可能性を両立できるのか。変革を遂げるためには、テクノロジーをどのように活用すべきなのか。そして、これからの製造業を率いる人に求められるリーダーシップとは、どのようなものか。世界経済フォーラムで「先進的な製造と生産の未来を形作るためのプラットフォーム」を率いるフランシスコ・ベッティに話を聞いた。



Francisco Betti(フランシスコ・ベッティ)

プライスウォーターハウスクーパースを経て、2015年5月に世界経済フォーラムに入社。「先進的な製造と生産の未来を形作るためのプラットフォーム」(Platform for Shaping the Future of Advanced Manufacturing and Production)の責任者として、同イニシアチブの戦略策定と実施を担う。

──ダボス会議で行われたセッション「The Return of Manufacturing」(ものづくりの復権)のイントロダクションでは、「世界経済の健全性と社会のウェルビーイングのためには製造業が極めて重要だ」との言及がありました。改めて、その理由を教えてください。

製造業が世界の主要な議題に戻ってきたのには、複数の理由があると考えています。

ひとつは、パンデミックによってマスクや人工呼吸器、医薬品、ワクチンなどの必需品を製造できなくなるとどうなるかを誰もが実感したからです。製造が中断されれば、私たちの生活も危険にさらされます。ものづくりは私たちの暮らしにとって重要であると、皆が実感しているように思います。

2つ目の理由は、気候変動対策の観点です。気候変動を止めるには製造業におけるCO2排出量の削減が非常に重要な役割を果たすことを、多くの人が理解していることが挙げられます。

そして3つ目の理由は、製造業は伝統的に高収入の仕事の源泉である点です。新興国では雇用全体に占める製造業の割合は大きく、製造業は雇用と経済成長の源なのです。

人々は、製造業は非常に戦略的であり得るということを理解しています。そのため、世界中の多くの政府が、製造業を復活させるための新たな取引やインセンティブ、制度などを打ち出しているのです。
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文=瀬戸久美子

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