食べ物と薬物に対する「渇望」、脳の働きに共通点

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「渇望」と呼ばれる何かを強く欲する願望は、過食や物質(薬物など)の乱用の主な原因であるとして、研究者たちは過去数十年にわたり、これについて調査を行ってきた。

先ごろ科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスに発表された研究結果によると、エール大学などの研究者からなるチームは機械学習を活用した研究の結果、過食と薬物(ニコチン、コカイン)依存、アルコール依存のある人たちの「渇望の強さ」を予測する神経マーカー(指標)の特定に成功したという。

研究チームはそのほか、食べ物や薬物に関連した何らかの刺激によって誘発される渇望についても調査を実施。きっかけになるものを明らかにすることで、不健康な食習慣や体重の増加、薬物の使用と再発などを予測することが可能になるとしている。

物質の乱用や過食などに関する理解にはこれまでに大きな前進がみられているものの、渇望の神経基盤については、いまだ十分な理解は得られていないとされる。また、渇望や物質使用障害(SUD)への介入の有効性について調査する際にモニタリングすべき標的(神経の)も、明らかになっていない。

fMRIデータと機械学習を活用


研究チームは、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を使用して3件の異なる調査を実施。それらの結果について分析を行った。チームはまず、99人の被験者に山積みのパンケーキなどのおいしそうな食べ物の写真と、薬の写真を見てもらった。

その後、高カロリーのものを食べたり、薬物を使用したりした場合の良い面と悪い面の両方について、考えてもらった。さらに、写真で見たもの対する自身の「渇望」の程度を評価してもらった。

被験者たちの脳の一部の領域に活動がみられることを示すMRIのデータと機械学習から、「神経生物学的にみた渇望のサイン(NCS)」を特定した研究チームは、それに基づき、すべての被験者たちの「渇望」の程度を予測することができたという。

研究チームは、NCSに関する分析により、薬物や食物(あるいはその他の報酬系への刺激)に対する渇望を巡る疑問、渇望に対する認知的・薬理学的介入とその他の介入についての疑問に取り組むことができるようになると説明している。

そのほか研究者らは、「NCSが認知調節戦略に敏感であることを発見した」という。SUDには心理的・行動的介入が有効と考えられる一方、そのメカニズムがいまだ十分に解明されていないことから、「これは重要な発見だ」と述べている。現在行われているSUDへの介入では再発率が高いことから、介入方法の改善につながる可能性があるという。
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編集=木内涼子

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