──ダイニングルームは、当時の天井画をそのまま生かした部屋、彩色を施して当時の様子を再現した部屋、さらに豪奢に仕上げた部屋と、時代を遡るように作ってあるのも面白かったです。
移転にあたって、様々なことを変えました。食器選びもそうですし、テーブルリネンをなくしたりもしました。サービスも、席数が最大80席あった前の店から、35席に変えたことで、よりきめ細かなものにできていると思います。
スタッフには「私たちの料理を共有したい」という気持ちを持ってお客様に向き合ってほしい、といつも伝えています。
──アートのある空間で作る料理は、当然その影響を受ける、ある意味、料理とアートの対話のような関係性だと思います。その対話という、循環の中にお客様を迎え入れるようなイメージでしょうか?
おっしゃる通りです。私たちは、大好きな伝統的な料理に新しいテクスチャや色使いを加えたり、私たちのスタイルを特徴付ける甘味と塩味の組み合わせを加えて、時代にあった料理を生み出します。そしてそれをお客様に感じていただく。
特にこちらに来て力を入れているのは、地元の小さな生産者と共に働くことです。
──朝食でも、パンやチーズ、シャルキュトリー、ジャムなど、それぞれ地元の生産者の方の顔写真の入ったブースがあって、まるでマルシェが朝食会場にやってきたようで楽しかったです。
パンはM.O.F.(国家最優秀職人章)を持つ職人が焼いてくれています。その他にも、私たちが実際に作っている場所を訪問したりして、上質なものを作っていると感じ、信頼関係を築いた人たちばかりです。
──ベルヴァル氏がつくった植物園は徒歩8分ほどの場所にありますし、お二人の店の名前も「ル・ジャルダン」。庭園という名前がついている、色々な意味でつながっている感じがしますね。
ベルヴァル氏は、地中海の色々な国を旅して、植物を持ち帰り、モンペリエに植物園を作りました。また、ここには植物療法でも知られるモンペリエ薬科大学もあります。健康はこれからのキーワードになるでしょう。この歴史的建造物の中で、ジャルダンの名の通り、地元の野菜もたっぷり使ったヘルシーな料理を、いかに洗練させて軽やかに提供できるかというのが、我々の進むべきところだと思っています。
オープンして6カ月足らずでミシュラン1つ星を受け取りましたし、これから、より多くのお客様に楽しんでもらい、満足してもらって私たちの料理を共有したい。
17歳で料理を始めて、今58歳です。ピエール・ガニェール、ミッシェル・ブラス、アラン・シャペル。素晴らしい方々のもとで働いてきました。彼らと同じように、我々も情熱がある限り、料理を続けてゆきたいと思います。