「最年少で三つ星」兄弟が本店をリニューアル、街に果たす役割は

ジャック&ローラン・プルセル兄弟

1988年、フランス・モンペリエに開業。1998年に史上最年少(当時)の33歳という若さでミシュラン三つ星に輝いた双子のシェフ、ジャック&ローラン・プルセル兄弟。

2002年には、海外初の支店として、ひらまつグループと共に東京・丸の内「サンス・エ・サヴール」を開店。今や世界に店を展開する。その兄弟が近年、モンペリエの市庁舎として使われていた歴史的建造物が廃墟のようになっているのを目にし、フランスの非営利組織「ルレ・エ・シャトー」と共に再建を決意。4年の歳月をかけたリノベーションを経て、ホテル 「リッシェ・ドゥ・ベルヴァル」として生まれ変わらせた。

同時に、本店「ル・ジャルダン・デ・サンス」をこのホテル内に移転し、2021年7月に新たなスタートを切った。筆者はちょうど1周年を迎えた2022年7月に訪問。ローラン・プルセル氏に、モンペリエの街のために果たすべき役割、これからの食について聞いた。


──クラシックな歴史的建造物の中にモダンアートを配置し、新しく生まれ変わらせていらっしゃるのが印象的でした。クラシックとモダンの融合はお二人のスタイルとも重なる気がしました。

そうですね。私たちが料理で大切にしているのは、地中海の良い食材を使い、今という時代にあった料理を作ることです。

──この場所とはどのように関わりがあったのですか?

私と弟のジャックはモンペリエの大学に通っていた頃、この建物の前を毎日通っていて、ずっとモンペリエの宝物だと思ってきました。元々は、モンペリエ植物園を作ることに貢献した地元の名士、ベルヴァル氏の邸宅で、のちに市庁舎として使われていましたが、建物が老朽化したことから14年間閉鎖されていたのです。

だんだんと寂れてゆく姿を見て、この建物を生まれ変わらせ、再びモンペリエの人たちが誇りに思うような場所にしたい、そして、ここから新しい美食に挑戦したいと思うようになりました。



──建物のあちこちにモダンアートが飾られていて、美術館のようです。どれもアーティストの方々にこの場所のために特別に作ってもらったものばかりとか。

デザイナーやアーティストに関して、かなり多くの部分を私たちで決めました。室内デザインを任せたのは、モンペリエ出身の若いアーティスト、クリスチャン・コロです。アートピースは5人のアーティストにお願いしたのですが、テーマを設定するのではなく、実際に私たちの料理を食べてもらったり、私たちの料理本を渡したりして、そのインスピレーションで作ってもらいました。

工事中には新しい発見もありました。レストランのある一階部分の天井から、17世紀のフレスコ画が登場したのです。市庁舎として使われていたときは、天井板が張られていたので、誰も気づかなかった。こうして古の美が保たれていたことにも感銘を受けました。

ホテル 「リッシェ・ドゥ・ベルヴァル」
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文・写真(一部)=仲山 今日子

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