ヴィーガンでもベジタリアンでもない。野菜料理の可能性を問う

フランク・フォルシェフ

健康への関心の高まりや環境配慮の観点から、最近ますます“菜食”や“プラントベース”が注目を集めている。しかしベルギーには、30年以上も前から「野菜をもっと食卓の中心に据えよう」という活動を続けているシェフがいる。

フランク・フォルシェフは、野菜に可能性を見出し、1989年にレストラン「シール・ピノック」を開店。2005年には、野菜料理の啓蒙活動にさらに専念するため、店を売却。コンサルタント活動を行いながら、2009年に現在の活動の元となる団体「We’re Smart Green Guide」を設立。2013年に、野菜料理が食べられるレストランのガイドブックの刊行もスタートした。

もともとは紙媒体だったが、デジタル化の流れと共に、オンラインでランキングの発表に移行。11月にスペインで「トップ100ベジタブルレストラン」を発表する。

自らの活動は「ヴィーガン」や「ベジタリアン」の推進活動とは一線を画すると語るフォルシェフの目指すものとは。来日時にインタビューした。

──そもそも、フォルシェフと野菜との関わりはどういったところから始まったのでしょうか?

40年ほど前、両親がワイナリー 「ドメーヌ・テンプルベルグ」を始めました。いまや、ベルギーで最も古いワイナリーの一つとなっていますが、その環境により、子どもの頃からぶどう畑で遊んだり、仕事を手伝ったりと、農や植物との関わりがとても深かったのです。

母は、この地域の名産の野菜、エンダイブ、白桃、イチゴ、カリフラワー、アスパラガスなど旬の野菜を使って、シンプルだけれどもおいしい料理を作ってくれました。

また、両親と共に、休みごとにワイン醸造所やレストランを訪れていたので、自然に料理の世界に引かれるようになり、シェフの道を選びました。料理にもっと野菜を取り入れるべきだと感じるようになったのは、7年間を過ごしたブリュッセルの三つ星フランス料理店「ラ・ヴィラ・ロレーヌ」のシェフとともにタイに招聘された時のことです。


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タイ料理の厨房で、バターやクリームを使う代わりに、野菜がたくさん使われていることに衝撃を受けたのです。ベルギーには素晴らしい野菜があるにもかかわらず、なぜいつも脇役なのだろう、と怒りに近い感情を覚えました。

ずっと脇役でシンプルな調理法しかなかった野菜に、もっと多くの調理のバラエティを見出すことができれば、自分のクリエイションの幅が広がると思ったのです。
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文=仲山 今日子

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