このサービスを展開しているのは、2016年に創業したスタートアップ「カケハシ」。薬局のDXを掲げ、Musubiを含む以下の5つの事業を展開してきた。
・Musubi:電子薬歴サービス
・Musubi Insight:薬局経営の見える化
・Pocket Musubi:LINEを使った処方箋の事前送付や次回来店までの服薬相談
・Musubi AI在庫管理:AIによる患者の来店予測や医薬品発注の自動提案
・Pharmarket:医薬品二次流通サービス
CEOの中川貴史(なかがわ・たかし)は、現在のカケハシを「レイターステージとシードステージの会社が混在しているような状況だ」と語る。
そうしたなかにあって、カケハシは1月5日には国内外投資家からの76億円の資金調達を発表し、新規事業にも乗り出していくという。
多くの事業を抱え、さらなる拡大も見据える同社は、どのように過渡期の組織運営を行っているのか。中川と新規事業を担う執行役員の西田庄吾(にしだ・しょうご)に話を聞いた。
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組織づくりの過程で大きな壁
カケハシの主要事業であるMusubiは、2017年にローンチ。最近では、ウエルシア薬局、イオン薬局、そうごう薬局など大手のドラッグストアチェーンでの採用が進み、現在7000店舗の薬局で利用されている。
しかし、ここまでの成長過程では、組織づくりにあたり大きな「壁」も経験した。特に苦労したのは2018年、わずか1年で社員数を20名から約100名に増やし、数名しかいなかった営業やカスタマーサクセス(CS)を10倍に増員したときだ。CEOの中川が語る。
「とにかく現場で活躍できる優秀な人を採れば大丈夫だと思っていました。ただ、社員100名を超えたところから、人員が増えるほどに事業が伸びないという状態になってしまった。
入社時、新たなメンバーに対してオンボーディングもせず、現場での意思決定の仕方も決めず、部署によっては入社3カ月の人が古株ということも。さらに、フラットな組織にしようと役職を設けていなかったため、誰も権限を持っておらず、目指す方向が定まらない状況でした」
当時の自分にアドバイスするならば「現場社員だけでなく、急成長組織でのマネージャー経験がある人材をもっと早いタイミングで採用しておくべきだった」と中川は振り返る。
そうした状況に陥りながらも、組織基盤を整えるため、カケハシはさまざまな取り組みを行ってきたという。