MVFの表彰でバリューを浸透
まず2019年1月に、行動指針となる以下の6つのバリューを制定した。
カケハシの6つのバリュー
なかでもユニークなのは「高潔」だ。これには「社会にとって良いことをする」ということを偽善などと斜に構えず、純粋に追い求めていこうという意味が込められている。こうした姿勢は、多くの薬局からの応援も生んだ。中川は以下のようなエピソードも明かす。
「あるときうちの営業が、薬局へ製品の売り込みに行ったのですが、その想いを聞いた人が『ぜひ薬剤師会で講演してください』と依頼してきたんです。普段は医師の偉い人が喋る場なのですが、その営業マンは、薬局の未来を熱弁してみんなを感動させ、帰ってきました(笑)」
まさに「高潔」が人々の心を動かしたのだ。業界や患者の体験を良くしたい、そうした社員の想いに共感が生まれたことが、カケハシの成長にも寄与したのだという。
ではどのようにこれらのバリューを社内に浸透させるか。それが、2020年秋から全社会議で実施している「MVF(Most Valuable Furumai)」の表彰だ。
「よくあるのはMVP(Most Valuable Player)ですよね。でもMVFのミソは人の良し悪しではなく、行動(Furumai)を評価することです。どういう振る舞いがバリューに沿っているのか、会社にとって良いのかを、この表彰によって明確に浮き彫りにできるのです」
さらに社内の情報の透明化にも努め、会議では面と向かっては言いにくいことを経営陣に問うという企画も実施している。これは社内コミュニケーションを担当する部署が、事前に社内でヒアリングして、社員に代わって経営陣に質問をぶつけるというものだ。
最近では社内ラジオの配信もスタート。事業方針や対外発表内容などに関して、司会を務める社員がCEOの中川や共同創業者の中尾豊らに深掘りする“声の社内報”だという。
「ペイシェントジャーニー」をデータ化
このような取り組みで組織運営をしてきたカケハシだが、中川は「会社は変化のタイミングにある。シェア10%を超え、次なる新規事業に踏み出すための土台が整った」と語る。