いま進めている新規事業は2つ。1つは、医薬品の価値をさらに高めていくことだ。どういった症状の患者が、どの薬を飲んだことで、どう改善したか。現在服薬指導のデータを取得しているが、その幅を広げることで、患者に最適な薬が処方でき、製薬会社も自社製品の良さを可視化することができる。
もう1つは、医薬品の流通の最適化だ。薬局が抱える医薬品の在庫を見える化し、薬の安定供給につながるプラットフォームの構築を目指している。
これらの新規事業をリードするため、2022年にカケハシに加わったのが、ボストンコンサルティング出身の執行役員、西田庄吾だ。
「コンサル時代にサポートしていたのは、製薬会社や医療機器メーカーです。彼らはグローバルな事業展開をしていましたが、海外マーケットで戦ううえで障壁になるのが、医療データが連携されていないことでした」
新規事業を担う執行役員の西田庄吾
「例えばアメリカでは、病気になって医療機関で受診すると、その後の症状回復に至るまでの一気通貫の患者データが存在します。これが日本にもあればビジネス展開をより積極的にできるなと当時から考えていました。
カケハシのシェアを考えると、患者さんが病気を自覚して、そこから治療や処方を受けて回復するまでを時系列で追う『ペイシェントジャーニー』がデータ化できると思ったのです」
西田は新規事業の展開についてこのように語るが、そのスタートとしてカケハシは前述のようにシリーズCとして76億円の資金調達を行った。投資家からは、薬局を超えた医療のプラットフォーマーになるポテンシャルが評価されたのだという。
着実に薬局のインフラとして成長するカケハシだが、さらに医療プラットフォーマーを目指すとなると、ライバル企業は他にもある。これまで蓄積したデータと業界からの信頼をどう発展させていくのか。今後の動向がますます気になる存在だ。