「ミュージシャンができるだけ大音量で音楽を聴く」理由


これらの曲を聴く際、被験者は「楽しむのに適切な大きさ」になるまで音量を調整するよう求められた。さらに、どの曲が一番好きかも回答。おそらく驚きではないだろうが、人は好きな曲を大きい音量で楽しむ傾向にあることを研究チームは確認した。

しかし全体的に見て、ミュージシャン(地元大学の音楽演奏および音響工学キャンパスで募集した)は、非ミュージシャンたちよりもボリュームつまみを大きく回した。これは長時間にわたると危険をともなう恐れがある。なぜなら、生涯を通じて大きい音をより多く耳にすることになるからだ。ミュージシャンは生活の中でより多くの音にさらされていることが調査の結果わかっている。たとえば、ライブ音楽の演奏場所で働いているためだ。研究結果はさらに、これまでの生活で音にさらされた時間の長い人ほど、音楽を聴くときに音量を大きくする傾向があることも示した。

被験者は全員同等の聴覚能力を持っていることから、ミュージシャンと非ミュージシャンの違いは聴覚喪失のためではないと考えられる(非常に軽微で検出不可能でない限り)。研究チームはそれ以外の理由をいくつか提起した。1つの可能性は、人間の脳が「楽しめる」と判断する方法に関するものだ。おそらくミュージシャンの脳は、音楽を楽しむために大きい音量を必要としているが、非ミュージシャンの脳はこの「快楽反応」を得ることができないため、音楽の音量が大きいかどうかは関係ない(よって静かに音楽を聴く)という考えだ。

しかし、もう1つの説明の方がずっと簡単だ。おそらくミュージシャンは楽曲の一部始終を聴くのが好きであり、それが自分の仕事だからだ。研究チームは「ミュージシャンが大きい音で音楽を聞くのは、曲の微妙なニュアンスを聴くため、あるいは単に、一般の人たち以上に音楽を楽しみたいからであり、だからボリュームを大きくして聴きたいのでしょう」と論文で述べている。

おそらくこれは、ナイゲル・タフネルがアンプの音量を11まで上げる必要があったかを説明しているだろう。『スパイナル・タップ』でタフネルは「ほら、(10より)1つ大きいだろ?」といっていた。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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