しかし、アフリカ市場では、欧米はおろか、母国の中国でもほぼ無名のブランドがトップシェアを獲得した。
そのブランドとは、深センに本拠を置く「テクノ(Tecno)」だ。2006年にアフリカでスマートフォンの販売を開始した同社は、今ではアフリカ大陸で約20%のシェアを持つトップブランドだ。テクノは最近、40年以上の歴史を誇るビジネス系メディア「アフリカンビジネス(African Business)」誌によって、アフリカで最も賞賛されるブランドの第6位に選ばれた。
テクノは、アフリカでトップシェアを維持するために多くの経営資源を投入し続けているが、近年では南米や東南アジア、インド、中東など、他の新興市場に参入し、現在では70以上の市場でスマートフォンを販売している。
テクノの歩みを見ると、北米や欧州、東アジアなど、裕福な先進国をあえて避け、今後成長が見込まれる新興市場を選択していることがわかる。同社のゼネラルマネージャーであるジャック・グオ(Jack Guo)も、同社が大手ブランドとの競争を避け、未開拓の市場でのシェア拡大を目指していることを認めている。
「スマートフォン事業に参入した当初、我々は90ヶ国以上を訪問して市場を分析した。他社の大半が中国と欧州に注力していたが、人口が多く、携帯電話の普及率が低い地域があることがわかり、我々はそこに注力することにした」と、2013年にテクノに参画したグオは話す。
アフリカなどの発展途上国をターゲットにするということは、当然ながら格安スマホを売ることを意味する。筆者が2年前に初めてテクノの端末を試用したときも、そのような印象を受けた。エントリーレベルとしては優れているものの、業界標準を押し上げるような端末でないことは明白だった。しかし、当時からテクノが高性能な製品の開発を目指していたことを、筆者は知る由もなかった。
ドバイで新端末を発表
テクノは今週、ドバイで初のフラッグシップシリーズ、「Phantom X2」と「X2 Pro」を発表した。最上位モデルの価格は約900ドルと、これまでの同社の最も高価な端末の数倍だ。
Phantom X2シリーズの発表会は豪華なもので、テクノが今後裕福な市場に進出することを印象付けるイベントとなった。といっても、同社がターゲットにするのは米国や日本ではなく、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などだ。この地域は、ナイジェリアやフィリピンよりも消費者の購買力が強い上、米国や英国と違って煩雑な手続きや地政学的対立に伴う政府の監視がないため、テクノにとって魅力的な市場だと言える。中東地域は、今後高い成長率も期待できる。調査会社カナリスト(Canalyst)の最近のレポートによると、中東のスマートフォン市場は2023年に2桁成長が見込まれるという。
テクノのゼネラルマネージャー代理であるローリー・バイ(Laury Bai)によると、Phantom X2 Proの最大の特徴である格納式レンズは、2年前から開発を進めてきたという。これは、長年に渡って利益の大半を研究開発に費やしてきた成果だと言えるが、同社は正確な費用を明らかにしなかった。