ラブロマンスありスリラーあり 2022年の隠れた名作映画5選


「LAMB/ラム」 ヴァルディマル・ヨハンソン監督


日本では9月23日に公開され、禁断のテーマを扱った作品としてじわじわと話題になっていたアイスランド、スウェーデン、ポーランドの合作映画。アイスランドのヴァルディマル・ヨハンソン監督の長編デビュー作だが、1月1日からアマゾンのプライム・ビデオで独占配信される。

アイスランドの人里離れた土地で暮らす羊飼いの夫婦。2人が飼育している1匹の羊から「羊ではない何か」が誕生する。夫婦はその「何か」を羊小屋から自分たちの部屋に運び出し、大切に育てていく。作品の途中までその正体は明らかにされないが、最後は思いも寄らぬ結末へと向かう。

すでに「何か」については関連のSNSなどでも明かされてはいるが、できればそれを知らずに観たほうが、より興味深くこの作品の世界に没入することができるはずだ。第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門では「Prize of Originality」を受賞しているユニークなスリラー作品だ。


「LAMB/ラム」2023年1月1日より Prime Video にて独占配信 (C) 2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

「土を喰らう十二ヵ月」 中江裕司監督


11月11日に公開がスタートしたにもかかわらず、いまも劇場でのロングラン上映が続いている。単館系の劇場が中心なので、足を運ぶ機会は限られるかもしれないが、上映館があったらぜひ観賞をお薦めしたい作品だ。

原案は作家の水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二ヵ月」。沖縄を舞台にした映画「ナビィの恋」(1999年)の中江裕司監督が脚本まで手がけ、オリジナルストーリーを紡いでいる。

長野県の山深い家で1人暮らしをする作家のツトム(沢田研二)は、畑で育てた野菜や山で採れた山菜などを調理して、味覚で季節を感じながら執筆の日々を送っていた。担当編集者であり、年下の恋人でもある真知子(松たか子)は、そんなツトムのもとを定期的に訪れていた。旬の食材でつくられた料理が並ぶ食卓は2人にとっては心安らぐ時間だったのだが。


(C)2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

劇中では、料理研究家の土井善晴が手がけた料理がとにかく美味しく描かれている。自ら料理の腕をふるう沢田研二の演技も見事で、実に役柄に嵌っている。食べることをここまで魅力的に描いた作品はなかなかない。並ぶのはけっして豪華な料理ではないが、映像からは食べることの幸せがそのまま伝わってくる作品となっている。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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