何しろこのトム・クルーズ主演の36年ぶりの続編は、5月末に公開されるやいなや全世界で大ヒットを記録、興行収入は14億ドル(約2000億円)を超えている。日本でも外国語映画では異例の134億円に達し、2010年以降に国内で公開された実写映画の第1位にランクされている。
しかしメガヒットの陰で、確実に映画ファンの気持ちを掴んだ作品もある。また地道にロングランを続け人々の心に深く刻まれた佳品もある。当コラムでは1年間、注目の新作を取り上げてきたが、上映時期の関係などで紹介しきれなかった作品のなかから、年末年始に配信や劇場で観たいお薦め作品を選んでみた。
「トップガン」旋風のなかで埋もれた良作
「リコリス・ピザ」ポール・トーマス・アンダーソン監督
7月に公開された作品だが、「トップガン」旋風のなかで埋もれてしまった感は強い。とはいえ、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアの世界三大映画祭で監督賞を受賞している実力派映画監督のポール・トーマス・アンダーソンの作品だけに、年末年始に配信される映画のなかではイチ押しだ。
タイトルの「リコリス・ピザ (Licorice Pizza)」とは、1969年から1980年代後半にかけてアメリカのカリフォルニア州南部でチェーン展開していたレコードショップの店名。最後にタイトルとしてクレジットされるだけで、作品中にはピザもレコード店も登場しない。
1970年代のロサンゼルスのサンフェルナンド・バレーに住む高校生の恋愛模様が描かれており、時代を表わす1つのシンボルとして「リコリス・ピザ」というタイトルが冠せられている。これまで、さまざまな話題作を送り出してきたアンダーソン監督だが、一転、自らの少年時代に立ち戻ったようなノスタルジックな物語を展開している。
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高校生のゲイリー(クーパー・ホフマン)はテレビの子役としても活躍していたが、カメラマンのアシスタントをしていたアラナ(アラナ・ハイム)と知り合い、ひと目惚れする。ゲイリーはウォーターベッドの販売なども手掛けるようになり、アラナも手伝うが、彼女の前にジャック(ショーン・ペン)という俳優が現われる。
半分ほど大人の世界に足を踏み入れた高校生と、モラトリアムな状態で揺れ動く25歳のヒロインとの甘く危うい恋が、アンダーソン監督らしく印象的なエピソードとともに描かれており、自らの若い頃に重ね合わせながら観るのもいいかもしれない。NBCユニバーサル・エンターテイメントからブルーレイ+DVDが発売中。U-NEXTやアマゾンのプライムビデオでも配信中だ。
「リコリス・ピザ」ブルーレイ+DVD: 5280 円 (税込)(C) 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.*2022 年 12 月の情報。