開発進む「インフル万能ワクチン」、実用化へ政府は支援策を

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「インフル万能ワクチン」、マウスで効果確認


ペンシルベニア大学のスコット・ヘンズリーらの研究チームはmRNA技術を活用して、これまで知られている20種類すべてのインフルエンザウイルスに対応できる「ユニバーサル(万能)ワクチン」の開発を進めている。ワイスマンもこれに協力している。

このワクチンはなぜ、現在のインフルエンザワクチンよりはるかに優れていると言えるのか?

毎年行われているインフルエンザの予防接種では、4種類のインフルエンザウイルス株から採取されたたんぱく質が混合されて投与されている。これら4種類の株の組み合わせは、インフルエンザウイルスの進化に応じて毎年調整される。だが、こうして製造されたワクチンが、その年に流行した株とうまく適合せず、効果が薄い年もある。

また、インフルエンザワクチンの現行の製造方法ではウイルスを鶏卵で培養する必要があるのだが、その際にウイルスがうまく増殖しないことがあるのも悩ましい問題になっている。その場合、メーカーは流行が予測される株と合わない、別の株を使わざるを得なくなる。こうしたワクチンでもないよりはましだろうが、残念ながら効果はあまり期待できないということになる。

これに対して、mRNAワクチンでは、鶏卵を使ったウイルス培養は不要になり、標的とする株も4種類だけに限定せずによくなる。開発中の万能ワクチンは、20種類の既知のインフルエンザウイルス株をすべて利用し、これらの株、さらには今後新たに出現する株に対しても効果を発揮するものになる。

今回の研究でペンシルベニア大学のチームは、20種類のウイルス株すべてを1つのワクチンに挿入した。それからマウスとフェレットを対象とした実験で、このワクチンに「病気の兆候を劇的に減らし、死から守る」効果があることを確認した。使用した株と異なるインフルエンザウイルス株にマウスなどをさらした場合も、同様の効果がみられたという。
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編集=江戸伸禎

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