生後まもなく養子としてカリフォルニア州サンホアキン郡に住む白人夫婦に迎えられたジャッジは、教育者の家庭で育ち、身長2メートル1センチの恵まれた体躯に成長。カリフォルニア州立大フレズノ校で活躍し、2013年のドラフト1巡目(全体32位)でヤンキースから指名され、エリート選手としての育成過程を経て、スーパースターの道を駆け上がった。
キャンプの臨時コーチやマイナー巡回コーチとして、若き日のジャッジの打撃指導に携わったヤ軍OBの松井秀喜氏は、ジャッジの成功要因を問われ、「向上心と謙虚さじゃないですか」と語ったことがある。伝統球団のリーダーとなる資質は、当初から備えていたようである。
「多くの選手と契約し、多くの選手が退団していった。ホーム・グローン(生え抜き)選手が稀な昨今、彼との再契約にとても興奮している」と、現職のGM最長就任となる25年を終え、更に4年延長契約を結んだキャッシュマンGMは感慨深げに語った。
アーロン・ジャッジ外野手とブライアン・キャッシュマンGM(Photo by New York Yankees/Getty Images)
大リーグにおけるキャプテンは近年、名誉職的な肩書となっている。
フルタイムのコーチが揃わなかった20世紀初頭まではスタメンを決めたり、試合中の抗議を行うなど、大きな権限を与えられていたが、コーチングスタッフが充実した近代野球では、次第にその役割が希薄になり、最近ではレンジャーズのベルトレ、メッツのライトが2018年までキャプテンを務めたのが最後。ちなみに、プレイング・マネージャーも1986年までレッズで選手兼監督を務めたピート・ローズ以後は姿を消した。
時代の流れと逆行する形でヤンキースが主将制を復活させたのは、2009年を最後に遠ざかっているワールド・チャンピオン奪回に「チーム・リーダーが必要」と判断してのことだろう。それが、冒頭のジャッジの決意表明にみて取れる。
2023年。ヤンキースは30球団唯一、キャプテンを擁する球団となる──。
記者会見前、写真撮影に応じたハル・スタインブレナー球団オーナー、アーロン・ジャッジ外野手、アーロン・ブーン監督、ブライアン・キャッシュマンGM(Photo by New York Yankees/Getty Images)
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