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2022.12.29 08:45

積水化学工業がグローバルで評価された「持続可能性」はどのような経営戦略がもたらしたのか

Forbes JAPAN編集部

持続的に社会課題解決に貢献する


──社内独自の「サステナビリティ貢献製品」制度も進化した。

加藤:20年から、自社製品の評価項目に「持続性」を加え、サプライチェーン(供給網)上のリスクや顧客満足度などを踏まえた評価を始めた。また、特に社会課題解決力と収益性が高い製品を「プレミアム枠」と認定し、経営資源を重点的に投入し、拡販に注力している。30年までに「サステナビリティ貢献製品」の売上高比率を80%以上に伸ばしていく。

サステナビリティにイノベーションは不可欠だ。革新的な技術も生まれてきている。例えば、ゴミをエタノールに変える技術「バイオリファイナリー」、高い耐久性を実現した「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」などだ。これらはかつて社内の全研究テーマのなかから選出したテーマから生まれた。「シーズとニーズが一致する研究テーマを高く評価し、強みをもって勝てる領域にリソースを集中的に投入する」という方針は変わっていない。

──今後、持続可能性をどのように高めていくか。

加藤:現時点の社会課題解決も大切だが、最も重要なのは持続的に貢献することだ。そのためにはイノベーションを生み出し続けていく仕組みが必要だ。収益をつくり、未来をつくるという両輪が大切になる。多様な事業・製品・技術をもつ総合力を生かし、当社が長年培ってきた28のコア技術を強みとして、「飛び地」ではなく、独自性を発揮しやすい領域を強化する。いまも「戦略的仕込み」をしている過程だ。

そして、イノベーションの継続には、一人ひとりの挑戦マインドが必要。我々には、製品やイノベーションによって社会課題解決を行ってきたDNAがある。長期ビジョンで、「挑戦」を社内外に伝えることにこだわったのはそのためでもある。


積水化学工業◎住宅・社会インフラ・高機能プラスチック・メディカル事業などを展開。1947年創業。22年3月期の連結決算売上高は1兆1579億円(前年比9.6%増)、営業利益888億円(同32.1%増)、従業員数は2万6419人。

加藤敬太◎1958年生まれ。80年、京都大学工学部卒業後、積水化学工業に入社。2019年に代表取締役専務執行役員・ESG経営推進部担当・経営戦略部長に就任。20年3月より現職。

文=一本麻衣 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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