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2022.12.29

積水化学工業がグローバルで評価された「持続可能性」はどのような経営戦略がもたらしたのか

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「ESG経営を中心においた革新と創造」を掲げる積水化学工業は、社会課題解決の貢献度が高い製品を「サステナビリティ貢献製品」と独自に定義する制度をもつなど先進的な取り組みをしてきた。

クリーンレベニュー(環境貢献度・社会貢献度の高い製品・サービスの収益)の割合が高いことが評価された同社では、大きな目標を掲げている。2020年策定の長期ビジョン「Vision 2030」では、30年までに業容倍増(売り上げ2兆円、営業利益率10%以上)を目指す。

社会の持続性向上への貢献が企業の持続的成長につながると考える、加藤敬太社長が見据える次の10年の経営戦略とは。


──30年までに業容倍増という長期ビジョンを策定した。

加藤敬太(以下、加藤):不確実性の高い時代で、どう生き残るか、持続的に成長するか、が長期ビジョンの前提だ。20年以上前からエコノミーとエコロジーの両立に取り組み、いまでいう持続的成長とESG経営の両立を進化させてきた。

環境を軸に社会課題解決に貢献するという、我々の強みを生かせる「サステナビリティ貢献製品」を増やしていくことでしか生き残れないと考えた。同製品の売上高比率を高め、社会への貢献を客観的に示し、従業員にも貢献を実感してもらう。貢献の量を増やし、質を高めることで利益を出すという方針だ。実際に、21年は同製品の売上高比率は66.7%に達し、シフトは着実に進んでいる。

オーガニックな成長だけでは目標値である売上高2兆円には届かない。現有事業の強化に加え、イノベーションによる新規事業やM&A(合併・買収)によってエクスポネンシャルな成長に挑戦しようという思いを込めた。中期経営計画(20〜22年)でも、5000億円の投資枠を設けた。30年までに総額2兆円超の成長投資・研究開発費を想定している。

──企業価値をどう向上させていくのか。

加藤:「サステナブルな貢献拡大に向けた考え方」として、「社会課題解決貢献力(売り上げ)」「利益創出力」の2軸に「持続経営力」を新たな強化ポイントとして加えた。持続経営力とは、効率性(ROIC、投下資本利益率)と長期持続性(資本コスト抑制)からなる。ROICと、非財務の取り組みも織り込んだ資本コストの差である独自指標の「セキスイ・サステナブル・スプレッド」を拡大させていく。拡大すれば、ESG経営が円滑にまわっていると判断できる。

20年以降、コロナ禍、半導体不足、原材料高騰など想定外な状況が続いたが、成長へのドライブはかかった。昨年度はEBITDA(利払り・税引き・償却前利益)が過去最高水準。利益率は原材料高騰でも上げることができた。今年度は、売り上げ、利益、いずれも過去最高を計画している。
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文=一本麻衣 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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