この問題に対するストローナ博士とブラッドショー教授の解決策は、巨大な仮想地球上に誰が誰を食べるかの捕食関係で相互接続された種のネットワークを構築し、気候や土地利用の変化をシステムに適用して将来予測を行う方法だった。
また、これらの種は気候の変化にともなって新しい地域に定着したり、条件の変化にある程度適応するしたり、地球規模の変化によって直接絶滅したりする可能性もあり、また絶滅連鎖の犠牲となる可能性もある。
ストローナ博士は「基本的に、私たちは仮想世界を一から構築し、世界中の何千もの種の依存関係をマッピングして、現実世界の転換点の可能性を考察しました」と説明する。
そして「2050年と2100年までの気候に関するIPCCの3つの主要シナリオについて多くのシミュレーションを行った結果、2100年までに、直接的な影響だけから予測されるよりも全体で最大34%も多くの共絶滅が生じることがわかりました」と語った。
ブラッドショー教授は「この研究は、生物多様性への二次的な影響も考慮し、生物種が絶滅した場合の直接的な影響だけでなく、地域の食物網における影響をも推定している点が特徴的です。この結果は、食物網内の相互連鎖が生物多様性の消失を悪化させることを示しています」と付け加えた。
「絶滅を予測するための従来のアプローチと比較すると、私たちのモデルは、気候、土地利用、生態学的相互作用に対応する、種の多様性のパターンの変動の洞察を詳細に行うことが可能です。今日生まれて70歳代まで生きる子どもたちは、その一生のうちに、小さなランや微小な昆虫から、象やコアラのような象徴的な動物に至るまで、文字どおり何千もの動植物種の消滅を目撃することになるでしょう」
2019年に発表された国連の総括報告書によれば、両生類は調査対象種の40%が危機に瀕しており、次いで植物が34%、サンゴが33%、サメやエイなどの軟骨魚類が31%、昆虫などの無脊椎動物が27%、哺乳類25%、鳥類14%が危機に瀕しているという結果になっている。
ブラッドショー教授は、気候変動が地球上の絶滅の主な原因であることは一般的に認識されているものの、新しい分析結果は、地球上の生物の多様性に対する気候変動の真の影響をこれまで過小評価してきたことを明確に示していると述べている。人間社会が大きく変わらなければ、私たちは地球上の生命を支えるものの多くを失う危機に立たされることになるのだ。
この研究は、『Co-extinctions dominate future vertebrate losses from climate and land-use change』(共絶滅が、気候と土地利用の変化による脊椎動物の絶滅に大きく影響する)というタイトルで、雑誌『Science Advances』(2022年)に掲載された。
(forbes.com 原文)