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2022.12.20 17:00

演劇とお笑いの狭間で 「ダウ90000」蓮見翔が見据える世界


──役者や芸人になりたいという思いは?

高校生の時には将来芸人になりたいという希望はあったのですが、バラエティとかを見ていても「僕には到底無理だな」と思いました。

高校時代の文化祭で、2年の時には映画、3年の時には演劇を制作演出して、「書く仕事ならなんとかいけるかも」と、日芸の映画学科映像表現理論コースに進みました。入試では文化祭の台本を提出して、公募推薦で合格しました。

──その後、在学中に演劇企画団体「はりねずみのパジャマ」を立ち上げ、これがダウ90000の前身になりました。2020年9月に「ダウ」を旗揚げしたきっかけを教えてください。

僕が大学を卒業する際、「はりねずみのパジャマ」の仲間に「就職する予定のない人だけ残ってください」と告げ、集まった連中で「ダウ90000」を結成しました。

僕は演劇とコントの両方をやりたいと思っていました。ただ、僕自身は小さい頃からお笑いが大好きでしたが、メンバーはほぼ俳優志望。そのギャップを埋めるため、自分のプランをかなり詳しく説明しました。

結成時すでに、4カ月後の1月に劇場を押さえていて、演劇公演を打つ予定でした。定期的に演劇公演をやることで、メンバーの「役者」としてのイメージが消えないようにする、というのはこのころから決めていました。そしてお笑い文脈では、月1回YouTubeにコントを出そうと決めました。



僕らの稽古はいつも短時間で、2週間前に台本を渡して3回合わせる程度なんです。メンバーには「後の時間はバイトしてくれてたらいい」と言っています。昔から、劇団でよくある、「めちゃくちゃ稽古して皆の時間を奪うのが当然」みたいな風潮は嫌だったんです。

僕自身も、コロナ禍で予定していた公演がなくなって、大きな借金を背負ってしまったので、働きたくて。日中はバイトでお酒の配送をして、夜中にコントの台本を書いて、少し寝てまた配送に行って、という毎日でした。

でもありがたいことに、演劇公演が即完したり、テレビのネタ番組に呼ばれたりすることが増え、この年末にはメンバー全員がバイトを卒業できるようになりました。

結成当初、メンバーには「皆がバイトを辞められるくらい稼げるようになるまでは、絶対続けるから」と伝えていたのですが、それが叶ってよかったです。
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文=矢吹博志 編集=田中友梨 撮影=小田駿一

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