思い出の場所を残し、自由に行き来したい〜中川翔子が語るメタバース

Forbes JAPAN 1月号別冊 Meta Communication メタバース〜覚醒する能力と五感

YouTubeチャンネル『中川翔子の「ヲ」』が開設されたのは2020年4月だった。緊急事態宣言が発出されていた時期ということもあり、開設直後ほぼ毎日、ゲームの実況動画を生配信していた。

本誌で注目したいのは、YouTubeによってファンとの交流がどのように変わったか、ということだ。生配信中にコメント欄を読んだり、リアルタイムで好きなものを共有したりといったファンとの双方向のコミュニケーションは、歌手・タレントである彼女にとって新鮮なものであったに違いない。

また、中川は約20年前のブログ黎明期に熱心に書き込みを続けた経験があり、かつ、大のゲーム好きとしても知られている。デジタル空間や仮想現実に対してすでにポジティブなかかわりをしている彼女は、近い未来に実現するであろうメタバースと現実の社会が融合した世界に、どんな夢を抱いているのだろうか。


──まずは、YouTubeチャンネル開設のきっかけについて教えてください。

中川翔子(以下、中川):コロナ禍で芸能活動が制限されたことを契機に、ゲーム「ファイナルファンタジーVIIリメイク」の実況を始めたのが最初の配信でした。大好きなキャラクターの声を聞きながら白米を食べる映像を流しただけでしたが、意外にも視聴者の方々からは好評で、「自分もこのキャラが好き!」と共感してくれる方もたくさんいました。

驚いたのは、海外の視聴者も含めて同時接続で2万人以上の方が配信を見てくださったことです。チャンネル開設当初は世界的にロックダウン中だったこともありますが、それにしてもリアルの世界では考えられないつながり方です。YouTubeってすごい環境なんだな、と一気に夢中になりました。

──他の場所でのファンとのつながり方と比較して、特にどんな部分が新鮮でしたか。

中川:いままでもファンの方と交流する機会は数多くありましたが、どことなく一方通行という印象でした。コンサートであれば、目の前にいらっしゃるお客さんと、同じ空間を共有し、その瞬間を一緒に生きている感覚がうれしくて、空にも届くような高揚感をもったりします。Twitterも、私のツイートにいつもたくさんのコメントをいただいていて、それもとてもうれしいことです。

さまざまな交流のかたちがあるけれど、YouTubeの何が私に一番響いたかというと、リアルタイムでつながり、コメント欄を通じてキャッチボールに似たコミュニケーションが成立することです。Twitterのコメントだと、どうしても時差があるので。

また、動画が一生残る点もいいなと思っています。どんなことをする時でも、いつも心のどこかで「自分が生きた証しを残したい」と思っていて。Twitterは過去の投稿を遡るのが少し大変ですが、YouTubeは一覧になるので動画を見返しやすい。これが、自分にとってとても魅力的なことでした。
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text by Forbes JAPAN BrandVoice Studio

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