16年前のTVドラマ出演者が全員集結 映画「Dr.コトー診療所」


17名の俳優がかつてと同じ役で出演


映画「Dr.コトー診療所」は、日本最西端の島である与那国島で3週間のロケを敢行している。その成果もあり、中江監督が言う「もう1つのテーマ」であるこの島の美しい自然が印象深く描かれている。

海と空の広がる雄大な景色の間をコトーが自転車で走っていくシーンは強く心が動かされる。小さなモニターではなく、大きなスクリーンでそれを観られるのも、映画ならではのことだろう。

監督がこだわったという16年前と同じキャストでの映画化というのも、この作品の重要な見どころとなっている。前出の原剛洋の父親である原剛利役の時任三郎、スナック「まり」の店主である西山茉莉子役の大塚寧々、コトーの妻である彩佳の父親役の小林薫、その妻を演じる朝加真由美が、それぞれの16年間を背負ったドラマを演じている。


スナック「まり」の店主である西山茉莉子を演じる大塚寧々(C)山田貴敏(C)2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

他の脇を固める俳優陣も16年前と同じキャストで貫かれている。元漁労長でご意見番役の泉谷しげる、診療所でコトーを手伝う市役所職員役の筧利夫、島の医療のために走りまわる志木那島の支所長役の大森南朋など、計17名の俳優がかつてと同じ役で出演を果たしている。


泉谷しげるはご意見番役の安藤重雄を続演(C)山田貴敏(C)2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

そして監督同様、脚本も16年前と同じ吉田紀子が執筆している。ちなみに吉田は2003年のテレビドラマからずっとシリーズの脚本を担当しているだけに、主人公のコトーをはじめ、登場人物のバックボーンなどすべて知り尽くしている。中江監督は吉田とは映画化が動き出した直後の2020年の夏頃から打ち合わせを始めたという。

「脚本をつくるうえで大事にしたのは、コトー先生がいまをどう過ごしているのか、何を思っているのかを考えることでした。吉岡さんが、以前、続編をつくるときに『コトー先生は何かを背負っていないとあの(島の)坂道で自転車のペダルを踏むことができないと思うんです』と言ったことが忘れられなくて」


市役所職員で志木那島の支所長を演じる大森南朋(C)山田貴敏(C)2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

こう語る中江監督だが、志木那島に住む人たちの群像劇でもあった「Dr.コトー診療所」に、今回は、コトー自身にも物語を動かす重大な役割を与えている。そして、それを受けて吉田が緻密な脚本を組み立てている。キャスト、監督、脚本家の変わらぬコラボレーションがこの作品でも成立しているのだ。

医療に潜むさまざまな問題にスポットを当てながら、島に暮らす人々のヒューマンなドラマを紡ぎ出す。舞台は美しい自然に恵まれた日本の西端の島。新たな気持ちで年末年始に観賞するのには、まさに心が洗われるうってつけの作品となっている。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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