「Dr.コトー診療所」は、山田貴敏の同名コミックを原作に、2003年7月にフジテレビ系列で連続ドラマの放送が始まった。地域医療をテーマにした作品であり、本土からフェリーで6時間もかかる離島を舞台に繰り広げられる人間模様は、多くの視聴者の共感を生んだ。
翌2004年11月には「Dr.コトー診療所2004」と題して、前後編のスペシャルドラマが放送される。2006年10月からは「Dr.コトー診療所2006」が、全11話の連続ドラマとしてスタート。平均視聴率は22.4%と、2003年シーズンの19%を上回る高い人気を得るに至った。
広い空と青い海、美しい自然のなかで繰り広げられるヒューマンドラマは、当然、極めて映像的で、描かれる風景は深く印象に残り、筆者がすでに映画になっていたのではと錯覚するのも、あながち許されて然るべきものかもしれない。
「Dr.コトー診療所」は2022年12月16日から全国東宝系にて公開中(C)山田貴敏(C)2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会
映画化はコロナ禍がきっかけ
では、なぜ16年ぶりに映画化されることになったのか。それには2020年に始まったコロナ禍が大きく影響しているという。ドラマでも演出を担当、今回の映画化でもメガホンをとった中江功(なかえ・いさむ)監督は次のように語る。
「正直『Dr.コトー』としてはやり尽くした感がありました。その後も(主演の)吉岡さんと会うたびに雑談も交えながら、続編をやるなら何をやるか、テレビドラマでやるのか、映画でやるのかなどを話していたのですが、大きなテーマが決まらず、『さあやろう』とはなかなかならなかったのです」
そうこうしているうちにコロナ禍となり、中江監督も、周囲で会えなくなってしまった人が何人もいて、人の生死について考える時間が増えていったという。そのなかで「やりたいことはやれるときにやらないと」と決断し、吉岡に「もう一度同じメンバーでやりたい」と伝えたのだという。中江監督が続ける。
「この16年間、島の人たちは島で生きているし、これからも生きていってほしい、というのが今回の映画でやりたかったことです。そして島の現在の美しい姿をスクリーンに映し出すというのももう1つのテーマになっています」